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【栃木】

創立70周年 宇大・石田学長に聞く(上) 「地域の研究と人材 世界へ」

「全国に先駆けた試みを仕掛けていきたい」と次代のビジョンを語る宇都宮大の石田学長。右は本紙の蒲宇都宮支局長=宇都宮市の同大で

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 県内唯一の国立大として、教育、産業各界に多彩な人材を輩出してきた宇都宮大は今年、創立七十周年を迎える。記念イベントとして、宇都宮市の宇大峰ケ丘講堂で十九日から二十四日まで、写真展を本紙と共催する。石田朋靖(ともやす)学長(64)が本紙の蒲敏哉宇都宮支局長と対談し、宇大が果たしてきた役割や現在の課題、教育研究機関としての将来を語った。

 −宇大が七十年間果たしてきた役割は。

 前身は栃木師範学校と宇都宮高等農林学校。地域の子供たちを教育し、科学的な農業を先導する人材を育てる学校だった。現在の教育学部や農学部に引き継がれている。

 地域の教育界の中核を担ってきたのは本学卒業生である。全ての教科で高い技量を持つ教員を育てるのは本学の義務だ。

 −令和元年となり天皇陛下代替わりの儀式、大嘗祭(だいじょうさい)で供された米には、県で開発された品種「とちぎの星」が選ばれました。

 農学部から多くの卒業生が県農業試験場に勤務しており、新品種の開発に携わった。

 コシヒカリの開発者も宇都宮高等農林時代のOB石墨(いしずみ)慶一郎氏。大学の農場で開発した「ゆうだい21」という素晴らしい食味の品種もある。ぜひ、広く味わってほしい。

 新制大学以降、約六万四千人が卒業しているが、教育や農業、物づくりやまちづくりなど各分野において“地域に学び地域に返す”をモットーに、地域に貢献できる研究と人材育成が宇大のベースであり、さらにそれを世界に発信できるレベルまで昇華させ続けている。

 そうした観点から一九九四年十月に全国の国立大の中で最初に国際学部を設け、二〇一六年四月には地域活性化をまちづくり、地域づくりの観点から文理融合して教育・研究する地域デザイン科学部を創設した。

 −いま抱える課題とは。

 宇大に限らず国立大はどこも財政が厳しい。国立大学法人に移行してから運営費交付金が一年に1%程度減り続け、一方で経費は増え、授業料は変わっていない。建物の耐震化などの整備にしても自主財源に乏しく、積み立てて対応するしかない。

 教員の数も減らさざるを得ない。〇四年には約四百人だったが、いまは三百五十人を切る。現場の先生たち一人一人が忙しくなっている。文部科学省などへ出す評価や申請の書類づくりなど従来にはなかった仕事が増え、先生たちの研究費は激減し、研究に充てる時間や学生と向き合う時間が少なくなってきている。

 −どう打開するのか。

 研究は無駄なことでも、コツコツと長く続けることで花開くもの。毎年のノーベル賞受賞者のメッセージは、目先にとらわれない基礎研究の大切さを教えてくれる。

 将来に向けて、基礎研究を重視し、時間的、予算的余裕を確保し、骨太の研究ができるようにすることが果たすべきことだ。

 また、教員たちが研究や教育に向き合う時間を確保できるように合理化しなければならない点も多く、一大学だけでできることは限られており、広く社会にメッセージを発信するとともに、国立大学協会などを通じ文科省に訴えることも続けていかなければならない。

 −二〇年から宇大は群馬大との連携で共同教育学部を開設します。

 両大学の持つ強みを足し合わせることができ、また、大学の教員減に対応できる。教員の多様性と数を十分に確保することで、小学校からの英語やプログラミング教育など新たな分野への対応も含め、教育の質をさらに高めていく上で大きなメリットになるだろう。

 そうした場合、双方の学生が離れた授業をテレビ画面で受けるリモート教育がベースになる。

 インターネットの通信環境も飛躍的に改善されつつあり、全国の大学でもテレビ会議が活用されつつある。教育に関しても米国の大学を中心に世界中に講義を配信し、アフリカにいて米国の大学の授業を受けられるようになっている。

 次世代通信の5G時代に向け、こうしたリモート教育の環境は今後、大きく整っていくだろう。

 この試みは全国でも初めてであり、危険を顧みず、最初に海に飛び込むファーストペンギンの役割を担っているとも言える。 (まとめ・北浜修)

<石田朋靖(いしだ・ともやす)> 1955年生まれ。群馬県藤岡市出身。東大農学部卒。東大院農学系研究科博士課程を修了。宇大教授、農学部長、副学長などを経て、2015年から学長。

 

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