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【東京】

10万人の言葉 東京大空襲、惨状伝える 墨田のダンサー・鈴木一琥さん

空襲で焼けた樹木の写真をあしらったチラシを手に、会場の蔵の中で15年目の公演を語る鈴木一琥さん=台東区で

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 永遠に聞くことができない東京大空襲の十万人の犠牲者の言葉を、生存者の証言と一人の肉体で表現するダンス公演「3・10 10万人のことば」が九、十日、台東区の「ギャラリー・エフ」(雷門二)である。二〇〇五年から毎年、ダンサーの鈴木一琥(いっこ)さん(46)=墨田区京島=が演じ続けてきた。新たな証言を加え、七十四年前、一九四五年三月十日の下町の惨状を今年も伝える。 (井上幸一)

 東京メトロ浅草駅近くのギャラリーは、関東大震災、大空襲にも耐えてきた江戸時代の土蔵。閉ざされた空間に闇が広がり、防空壕(ごう)をほうふつさせる。戦争体験を語る十数人の言葉が流れ、鈴木さんは、何かに心を揺さぶられたように身体を動かす。

 回を重ねるごとに、証言を付け足しており、パフォーマンスは、その年限りの一期一会。十五回目の今年は、大空襲の際は子どもで、第四吾嬬小学校(墨田区)に逃げ込んだ八十代の女性の証言を新たに得た。今は鈴木さんの長女が通う学校で、この女性は現在の校長の母親という。

 当日の状況を聞くと、逃げたことは覚えていたが、「死体は見ていない」。鈴木さんは「親が見せないようにしたのか、つらい記憶が飛んでいるのか」と思いをめぐらす。焼け残った複数の蔵を浅草で見た記憶もあった。一つは会場の蔵かもしれず、鈴木さんは「不思議なつながりを感じる」という。

 「十万人のうち、一人の『言葉』でも、受け止められれば」と鈴木さん。二〇一九年の今、演じる意味も考えている。「海外ではいまだ爆弾が使われ、暴力で世界を変えようとする人がいる。アートは暴力ではない手段だから…」

 音声構成は、カワチキララさん。公演は九日が午後五時、十日が同三時開演。定員三十人。要予約。前売り三千円、当日三千二百円。ワンドリンク付き。予約申し込み、問い合わせは、ギャラリー・エフ=電03(3841)0442=へ。

 

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