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【東京】

地生態学から謎解き 東京学芸大名誉教授・小泉さん本出版

「野外に出て全体を観察し、なぜそこにあるのかと解き明かすのは楽しい」と話す小泉武栄さん=立川市で

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 植物はなぜそこにあるのか−。東京学芸大名誉教授で、地生態学が専門の小泉武栄(たけえい)さん(71)=あきる野市=が、これまで全国各地を訪ね歩いて研究してきた成果をまとめた著書「地生態学からみた日本の植生」(文一総合出版)を出版した。細分化された自然科学を「つながり」の視点で一つのシステムととらえ、植物分布の謎を解く方法を、豊富な事例を基に示した。 (萩原誠)

 小泉さんは、地生態学の研究手法で地形や地質、自然史を基に自然の成り立ちを解明してきた。本書では、高山から低地、河川まで国内外の植生事例を取り上げ、それぞれの土地でどうしてその植物が成長するのか謎解きがしてある。

 あきる野、福生両市に挟まれた多摩川の河原に見られるカワラノギク。かつて多摩地域を代表する植物とみなされてきたが、河川改修や洪水などの影響で徐々に減少してきた。ところが二〇一三年十月、あきる野市側の河原一面が白くなるほど開花した。その理由を調査し、河原の地形や豪雨による洪水の規模などが影響していると指摘。カワラノギクの絶滅を阻止するためには、単に種をまくだけではなく、出水の規模、河原の玉石の広がり、河川の断面形など地形学的な視点からの検討が必要と提言している。

 奥多摩町にある奥多摩湖の南に位置する三頭山(みとうさん)は美しいブナ林で知られるが、大木が多い一方、若木が少なく育っていない現状を指摘。また、一部地域ではシオジ、サワグルミの生育する場所が明確に分かれていることにも触れ、地質や気候など、さまざまな要因を示して、その理由を解き明かしている。

 このほか、多摩地域の地形の生い立ちとカンアオイ類の分類との関係といった研究成果、地生態学の解説や歴史、海外の研究事例なども紹介した。登山愛好家や自然保護活動をしている人、自然ガイドなど多くの人に読んでほしいという小泉さんは「なぜそこにあるのかと仕組みを考えると自然の理解が進み、自然保護にもつながる。本書をもとに野外に出て植物や地形を観察し、さまざまな仮説を立てて実証していく楽しさを体験してほしい」と話している。

 四百四十八ページ。六千円(税別)。問い合わせは文一総合出版=電03(3235)7341=へ。

 

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