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【東京】

<ひと ゆめ みらい>「駅前桜」に再び樹勢を 「仙川出会いふれあいの会」代表・本間紫蘭堂さん(81)

樹勢が衰え、枯死の危機にある駅前桜を救おうと訴える本間紫蘭堂さん=調布市の仙川駅前で

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 「みなさんが約二十年前に署名運動をして残したこの桜が枯れて、ここから消えてしまったとしたら、どう思いますか」

 二日夕、調布市の京王線仙川駅前にある通称「駅前桜」の下で開かれた恒例の「夜桜チャリティーコンサート」。主催者で、駅前桜の保護活動を続けている市民グループ「仙川出会いふれあいの会」の代表としてマイクを握り、語りかけた。

 弦楽四重奏などの演奏でにぎやかだった会場はシンと静まり返った。本間さんの言葉に、多くの人々が頭上の桜に起きている「異変」に気付いた。樹高六メートル、枝張り十メートルの桜を見上げると、「満開」に見えた枝の半分は、花はおろか芽さえつけていない。

 駅前桜は一九四一年に現地に植樹されたソメイヨシノで、樹齢約八十年の老木だ。毎年、美しい花を咲かせ、地元の人々に愛されてきた。本間さんも毎年、花見を楽しんできた。

 しかし二〇〇〇年秋、駅前の再開発計画が持ち上がり、伐採の危機に直面した。「あの桜を切るなんて、とんでもない。絶対止めなくては」。本間さんら市民グループが立ち上がり、伐採反対の署名運動を展開した。二週間で一万四千人分の署名が集まった。高まる市民の声を届けると、市は伐採を中止し、桜を残して駅前を整備する計画に変更した。

 こうして守られた駅前桜だが、昨年六月には樹木医の診断で樹勢の衰えが指摘された。本間さんは気にかけてきたが、年が明けて花のシーズンになると、枯死の危機がより現実味を帯びて感じられた。「花を半分しかつけない姿を見せるのは初めて。油断していた。まさかここまで衰弱しているとは」と事態の深刻さに焦りを募らせた。

 成長の早いソメイヨシノの寿命が、長寿命の他品種の桜に比べ短いということは頭では理解している。しかし、「駅前桜は僕ら市民が行政を動かし、守った地元のシンボルだ。失うにはあまりにも惜しい」。樹木医の見立てでは「土壌を改良し、施肥をきちんと行えば、百年までは生きる」とのこと。「それならば、延命治療に賭けてみたい」と、また立ち上がった。

 本間さんらはコンサート会場で、「延命治療」「樹勢回復」を訴えて募金を呼び掛けた。寄せられた善意は約四十八万円。グループの仲間とともに駅前桜を管理する市を訪ね、「駅前桜の樹勢回復に役立ててほしい」と託した。駅前桜に再び樹勢を取り戻すため、対策工事の早期実現を市側に粘り強く働き掛けていく考えだ。 (花井勝規)

   ◇

 1937年生まれ。出身地の新潟県村上市には桜の名所として知られる村上城跡があり、「幼いころから桜のとりこになった」。都内の出版社を定年退職後は夫婦で全国の桜の名所を巡った。2000年秋に巻き起こった仙川駅前の「駅前桜」保存運動に参加。伐採中止後、「仙川出会いふれあいの会」を結成し、翌春からコンサートを続けている。

 

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