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【東京】

教訓学びに被災地訪問 企画会社の田端有香さん、高校生向けにツアー

高校生向けの被災地ツアーなどを通じ、日ごろから災害に備える必要性を呼び掛ける田端さん=都内で

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 静岡県沼津市出身の田端有香さん(26)=埼玉県三郷市=が東京の企業で、高校生に東日本大震災の被災地を案内し、防災意識を高める活動に取り組んでいる。「被災者の人たちが負った悲しみを、私たちは絶対に繰り返してはいけない」との信念を胸に、災害に備える大切さを説いている。 (杉原雄介)

 二〇一一年三月十一日、沼津東高三年だった田端さんは自宅で強い揺れを感じた。「ついに東海地震が来たと思った」と振り返る。テレビから流れるのは、津波で甚大な被害を受けた東北の光景。「沼津も大地震が起これば壊滅するかもしれない。もし被災した時、どうすれば自分や家族の命を守れるか知りたい」との思いを強くした。同年四月に東京の大学に進学。一年時の秋にボランティアで宮城、岩手両県を訪れ、卒業まで毎年被災地に足を運んだ。がれき拾いをしたり、仮設の集会所でたこ焼きパーティーを開いたり。被災者と交流する中で心に強く響いたのが、全世帯の99・5%が被害を受けた岩手県陸前高田市で、仮設住宅の自治会長の男性からかけられた一言だった。「ここに来たからには、俺たちと同じ目には絶対遭わないでくれ」

 男性は漁師だったが津波で自宅と船を失った。海が恐ろしくなり、漁師もやめざるを得なくなっていた。絞り出した言葉を聞き、「被災者の経験や思いをムダにできない。誰もが被災者になり得ることを多くの人に伝えたい」との決意が芽生えた。

 大学卒業後は旅行会社を経て一七年十月、学校や企業に社会問題の現場を案内するツアーを提供するリディラバ(文京区)に就職。一七〜一八年に、東日本大震災で千人以上が亡くなった岩手県釜石市へのツアーを企画した。

被災地ツアーで震災復興の象徴となったスタジアムを見学する高校生たち=岩手県釜石市で(田端さん提供)

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 富士見丘中学高等学校(渋谷区)の高校一年生約百人を一泊二日の日程で連れて行き、震災で大きく変わった町並みや、釜石鵜住居復興スタジアムなどを見学。「新しくできた建物が多く並ぶ光景を見て、津波の激しさを感じ取ってもらえたら」と狙いを語る。被災者らに、震災当時の状況や復興への取り組みを聞く機会も設けた。

 ツアー後、被災した場合の避難場所や連絡手段を家族と話したり、防災グッズを買いそろえたりする生徒も出ている。被災者から生きた話を聞くことで、防災意識が格段に高まる効果があるという。

 仕事とは別に、防災意識を高める活動も行う。「故郷を守りたい」との思いから昨年八月、沼津市で防災啓発映画「いつか君の花明かりには」の上映会を開催。東日本大震災や熊本地震(一六年)の被災者や防災の専門家らへのインタビューを通じ、身を守るために必要なことを伝える内容で、同市の加藤学園暁秀中高や静岡県長泉町の女性団体にも上映の輪が広がった。

 釜石市へのツアーは今年も実施予定。田端さんは「災害に遭った時にとる行動や逃げる場所を、日ごろからイメージしておくことが大事」と指摘する。「どんな人も死んだら誰かが悲しむ。大切な人のため、一人一人が身の守り方を考えてほしい」

 

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