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【東京】

<ひと ゆめ みらい>古民家で昔話の世界 紙芝居「いっぷく座」代表・井上直子さん(48)

古民家で紙芝居の公演を続けている井上さん=町田市で

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 カーンカーン−。拍子木を合図に紙芝居が始まる。会場は地元、町田市能ケ谷にある築約百五十年の古民家。縁側に面した十八畳の部屋で、集まった子どもらに紙芝居「いっぷく座」のメンバー三人が役を分担し、昔話や落語のはなしを繰り広げる。

 幼少期から、ほぼ能ケ谷の住人。長男(17)が小学生のとき、自らの母校でもある小学校で読み聞かせのボランティアをしていた。長男の好きな落語を手作りで紙芝居にして披露したら、児童たちから毎回楽しみにされた。長男の卒業後は機会がなく「寂しいなあ」と感じていたところ、二〇一四年に学校から開校五十周年記念で紙芝居の上演を打診された。

 学校の開校時期をテーマに、近所の人たちも協力して通学路を整備したことなどエピソードを聞き、紙芝居に仕立てた。住民向けに上演する際、会場として借りたのが現在拠点にしている古民家。昔話や落語に出てきそうな雰囲気があり、庭に茂る草木からは季節を感じた。

 「ここで紙芝居を続けられたらいいね」。かかわった母親たちと交わした言葉がきっかけで、一六年に母親仲間三人で「いっぷく座」を発足させた。「一服(休憩)」と「一つの幸福」の意味を込め、一七年十二月に初演した。

 レパートリーは「かさじぞう」「寿限無(じゅげむ)」など、昔話や落語を題材にした約二十種に増えた。手作りの箱を使い、古民家で年四回公演している。昨冬からは、地元落語家を招いてのセット公演も始めた。

 小中学生時代、演劇部で脚本を担当した経験を生かし、家事の合間に脚本を書く。絵も自作で「季節を大切にしたい」と季節ごとに風景を描き分ける。長男を相手に試演するなど、月数回の練習を重ねている。

 紙芝居に力を入れるのは、自身が子どものころ、母親の読み聞かせやテレビアニメ「まんが日本昔ばなし」を楽しんだように、ネット社会に生きる現代っ子にもライブ感を楽しみ、ワクワクしてほしいと願うからだ。子どもだけでなく「三世代が楽しめる」もモットー。「いろんな人に見てもらえたら、この上ない喜び。ただただ紙芝居ができれば」と、紙芝居のみの公演は木戸銭なしで催す。

 新しい挑戦も見据える。「『こんなの、あったの』という伝統工芸や職人の仕事を紙芝居で紹介したい。失われつつあるものを次世代に伝えたい」。古民家に来られない入院患者や高齢者にも見てもらいたいと、介護福祉士の資格も取って方策を模索中だ。 (松村裕子)

<紙芝居公演> 次回は7月15日午後2〜3時。無料。落語家柳家小はぜさんとセットの「古民家噺(はなし)の会」は9月15日午後2時〜3時半。木戸銭は事前予約が一般1000円、小中学生500円、当日が各1200円、700円。会場の古民家は町田市能ケ谷7の23の11。予約は、いっぷく座=電080(6511)4076。

 

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