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【東京】

「地方病」との戦い 叙事詩につづる 深川の橘田さん出版

深川生まれの橘田活子さんの著書「茶碗の欠片」

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 深川(江東区)生まれの詩人、橘田活子さん(76)が、原因が分からず、山梨県の風土病の奇病とされ、恐れられてきた「日本住血吸虫病」との戦いの歴史をつづった叙事詩集「茶碗の欠片(かけら) 杉山なか女(じょ)と地方病」を著した。

 「地方病」と呼ばれた病気は、寄生虫が農作業などをする人の皮膚から体内に入り感染。雌が産んだ卵が血管を詰まらせ、発熱や下痢を引き起こし、腹が膨れ、手足はやせ細り、死に至るケースもあった。中間宿主のミヤイリガイの駆除が効果を発揮し、一九九六年に山梨県知事が終息宣言を出した。

 タイトルの「茶碗の欠片」は、欠けた茶わんが使えないことから、この病気で働けなくなった人をかつて呼んだ言葉。叙事詩集では、明治から昭和にかけ、「百年戦争」とも称された病気の原因解明、終息に向けた活動に尽力した医師や学者、地域の人々の行動を記している。

 副題にある杉山なかさんは患者で、自身の体を解剖して病気の原因を突き止めてほしいと願い、一八九七(明治三十)年に死去した。この遺体解剖で、臓器から卵が見つかり、病気の原因が寄生虫だとはっきりつかめたというくだりに、ページが割かれている。

 深川に生まれた橘田さんは、二歳のときの東京大空襲で山梨県の父の実家に疎開。そのまま山梨で暮らしてきた。現在は甲斐市在住。農家の人に聞いて地方病の存在を知り、「沼は埋め立てられ、風景が変わって忘れ去られる。そこに何があって、何があったのか、書き残しておかなくては」と思った。展示施設「昭和町風土伝承館杉浦醫院(いいん)」(山梨県昭和町)の中野良男館長ら多くの人の協力を得て、構想執筆に十年以上かけたという。

 著書は二千二百円(税別)で、百年書房(墨田区)=電03(6666)9594=から出版された。 (井上幸一)

 

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