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【東京】

<つなぐ 戦後74年>上野地下線の記憶をアートで ネジ生産した軍需工場 「旧博物館動物園駅」で企画展

映像を映した昔の列車の窓枠の前で、展示について語る大洲大作さん

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 地下に改札やホームがあった台東区の京成電鉄「旧博物館動物園駅」(上野公園)で、美術家の大洲大作(おおずだいさく)さん(46)=横浜市=によるインスタレーション(空間芸術)作品「未完の螺旋(らせん)」が展示されている。終戦間際に国に接収され、軍需工場などがあった上野地下線の歴史的記憶をアートで呼び起こす企画だ。十八日まで。

 上野と谷根千(台東区谷中、文京区根津、千駄木)地区で、芸術イベントを企画する「アートリンク上野−谷中」実行委員会の主催。二〇〇四年に廃止された駅は昨年、西洋風の荘厳なデザインから、駅舎として初めて都歴史的建造物に選定された。

 階段には、ネジを表現した立体造形が並ぶ。一九四五年六月、駅を含む線路を接収した後に設けた地下工場で、主にネジが生産されていたからだ。当時の列車の木製の窓枠を置き、現代の車窓からの風景を映写するアートも。接収後に客車八両が運び込まれ、運輸省の臨時鉄道司令室となった史実に由来する。

 「空襲だけは毎日有った」「少なくとも戦争終結は、私達若者が凡(すべ)て死絶えた後の事と思っていた」。当時、別の軍需工場で働いていた大洲さんの父(故人)の手記がアートに添えられ、戦争関連の展示と分かる仕組みだ。

 タイトルの「螺旋」はネジ山や、この駅の構造を表し、大洲さんは「日常が螺旋のように繰り返され、巻き込まれて、誰も戦争を止められなかった」と、時間軸でもあるとする。さらに「その夏も、この夏も変わらない」と「未完」と付けた意味も示唆した。

 会場は薄暗く、汗が噴き出す蒸し暑さ。アートリンクの津布久静緒(つぶくしずお)事務局長は「この時季だからこその企画。戦時の状況を、身体で感じてもらえたら」と話している。

 午後一〜六時。入場無料だが、整理券(連日午後零時半から配布)が必要。問い合わせは、事務局=電080(6616)1950=へ。 (井上幸一)

旧駅のホームへ続く薄暗い階段に並べられたネジのアート=いずれも台東区で

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