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【東京】

<ひと ゆめ みらい>市役所屋上で飼育に奮闘 市営養蜂のリーダー・海老沢雄一さん

養蜂プロジェクトを引き受けている総務課の海老沢雄一さん=清瀬市役所で

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 「夢のある仕事をしてみないか」

 二〇一三年初夏、清瀬市役所の一室。総務課営繕係の海老沢さんは副市長からそんな言葉をかけられた。都内の大学が養蜂を始め、地元商店街の活性化に役立っているとの話で、市でもやってみてはどうかという提案だった。

 「無理です」。営繕係の仕事が多忙などと理由を並べ、断った。だが本当の理由は別にある。子どものころからムシが大の苦手なのだ。

 半年後、再び呼び出され本を四冊手渡された。いずれも養蜂に関する参考書で「こりゃ、逃げられないな」と腹をくくった。

 一四年、インターネットや参考書を頼りにミツバチの飼育方法を調べ始めた。飼育係のチームを四人で発足。三つの巣箱やミツバチ一万八千匹、遠心分離機などの養蜂セットを買い求め、市役所屋上で飼育がスタートした。真夏は照り返しで気温が上がり、屋上は五〇度にもなる。ハチに刺されて顔が腫れ上がるなど苦労の連続だった。

 それでも、春から秋にかけてハチミツ四十キロを収穫できた。小さな瓶に詰め、市民向けイベントで売り出すと数時間で飛ぶように売れた。「ハチミツにはこんなにも需要があるんだ」。首をかしげながら取り組んだ養蜂に可能性を感じた瞬間だった。

 屋上での市営養蜂を始めて今年で六年目。巣箱は十一箱、ミツバチは約六万匹に増えた。その年の気候でハチミツの収穫量の変動は大きいが、昨年は百三キロ、今年は六十四キロを収穫できた。飼育からハチミツの製造、瓶詰め作業、販売まで市職員がこなす、全国的に珍しい取り組み。「Kiyohachi」ブランドの知名度は以前とは比べようがないほど向上した。

 昨年から、菓子店のほか化粧品メーカーなど地元企業への販売も始め、マドレーヌなど利用例も広がりつつある。友の会組織も作り、会員は六百人を超えた。副次的効果もあり「ミツバチのおかげで収量が増えた」と、市内の果樹農家から感謝の言葉をかけられる。

 清瀬市の動きに触発され都区部などで養蜂に参入する自治体が増えてきた。養蜂に取り組む自治体職員の会合の席では「どう、うちの子かわいいだろう?」とスマホに保存したミツバチたちの写真を見せ合いながら自慢話に花が咲く。

 ムシ嫌いの皮を脱ぎ、ミツバチを愛してやまない公務員養蜂家に。海老沢さんは自身の変化に驚いている。 (花井勝規)

    ◇

 1970年、中野区生まれ。92年に清瀬市役所に入庁。税務課や企画課などを経て、現在は総務課営繕係の係長。2014年から市営養蜂のリーダーを務める。問い合わせは同市営繕係=電042(497)1841=へ。

 

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