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【東京】

9年前、目白駅ホームで転落 「全盲夫の死 無駄にしない」

点字ブロックを視察し定規で段差を測る武井悦子さん(左)=2019年10月11日、葛飾区の京成立石駅で

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 約9年前、JR目白駅のホームから、全盲の日本ブラインドテニス連盟会長だった武井視良(みよし)さん=享年(42)=が転落して亡くなった。妻の悦子さん(64)=豊島区=は事故後、ふさぎ込んだが、視覚障害者の転落事故がなくならないことから、声を上げるようになった。自身も全盲で、「夫の死を無駄にしてはいけない」と訴え続ける。 (中村真暁)

 二〇一一年一月十六日、悦子さんと視良さんは外出先からの帰り道、降車予定の駅を乗り過ごした。乗り換えのため、下車したのが普段は使わない目白駅。前を歩く視良さんが、ホーム幅の狭いところで線路に転落し、電車にひかれた。

 視良さんはブラインドテニスの考案者の一人で、連盟会長として普及に力を注いでいた。「ずうずうしく私が生き残ってしまった。逆だったらよかったのに」。悦子さんは自分を責め、通勤途中で目白駅を通ると、涙が流れそうになった。

 一七年の七回忌が転機となった。六年前に事故が起きた日の同じ時刻の午後五時十七分、家族らと事故が起きたホームに立った。小さな机を貸してもらい、視良さんが愛飲していた缶コーヒーと菓子を置き、花を添えて黙とうした。

 「けじめをつけようと、心に決めました。これからは君(視良さん)のこと、忘れて頑張るよ」

 視良さんの事故後、ホーム内側を示す「内方線」付き点状ブロック、ホームドアの整備が進んだ。だが、構内放送が聞こえにくかったり、点字ブロックがずれてつまずきやすくなっていたり、万全とはいえない。鉄道会社や駅ごとに、取り組みへの温度差も感じる。

 悦子さんは一八年五月、豊島区盲人福祉協会の会長に就任した。視覚障害者が転落する事故が起きた京成立石駅などを視察し、「当事者の意見を生かしてほしい」と思いを強めてきたが、先月十一日にまた、JR日暮里駅(荒川区)で、視覚障害のある男性が転落死した。

 「事故で傷つくのは、視覚障害者だけではない」。運転士ら鉄道関係者にも影響がある。日暮里駅の視察時には、「夫の事故で運転していた人に、申し訳ないと伝えてほしい」と職員に声をかけた。

 悦子さんは今年の命日も目白駅のホームに立ち、視良さんに語りかけた。「あなたのような人を二度と出したくない。みんなのために頑張るから、応援してよね」

 

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