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【国際】

学校でスマホOK?

パリ市内で、中学校に登校する生徒たち。9月から携帯電話の使用が禁止された=竹田佳彦撮影

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◆フランス × 勉強優先、法律で禁止

 フランスは今年九月、すべての幼稚園と小中学校内でスマートフォンなどの使用を原則禁じる法律を施行した。勉強に集中させるとともに、校内での盗難やネット上のいじめを防ぐなどの狙いだ。世界では授業で積極的な利用を呼びかける国もあり、スマホと教育との関係は模索が続いている。

 禁止されたのはスマホを含む携帯電話やタブレット端末、通信機能などがあるスマートウオッチ。仏生活環境調査観察研究所の調査によると、十二〜十七歳の86%が携帯電話を持っており、中学生は大部分が影響を受ける。高校は学校の判断で独自に禁止できるが、すでに導入しているところは多い。

 ブランケール国民教育相は「携帯を使わなければならない時もあるが、コントロールは必要だ。禁止は家庭に対するメッセージだ」と意義を強調した。パリ市内の勤務先が禁止した高校教諭マリー・エレナさん(48)も「カンニング対策や授業に集中するための規制は当然必要」と理解を示す。

 エレナさんの高校では九月の導入後、一週間で百五十台を生徒から没収した。「普通は保護者を呼び出して返却するが、時間と手間がかかって仕方がない。保管場所にも困り、結局は夕方に生徒に返した」と禁止による混乱も打ち明けた。

 保護者からは「学校での禁止は当然」という声が多い。ただ、学習障害(LD)がある中学生の母親は「授業中、メモをとることも難しい。教師の板書を携帯カメラで撮れるとありがたい」と言う。法律上は障害や病気のある児童は禁止の対象外だが、まだまだ浸透していない。

 欧州では、学校での携帯使用について対応が分かれている。

 スウェーデンでは、長時間のスマホの使用が脳や神経の発達に悪影響を及ぼすなどとして、フランス同様に禁止は定着している。二〇一六年の調査では、十〜十五歳の57%が禁止に理解を示した。

 ドイツでは九月、教職員組合がいじめへの懸念から、十四歳以下の子どもの学校持ち込み禁止を呼びかけた。英国では学校ごとに対応が委ねられている。

◆イタリア ○ 積極導入 学力向上狙い

 イタリアでは〇七年から携帯の教室持ち込みを禁じていたが、一六年に解禁。政府は校内のWi−Fi化やブロードバンド化で、授業でも積極的に使用できる環境整備を進める。ファラオネ教育次官は「学習障害のある子どもにとっても助けになる」と述べ、全体的な学力向上が期待できるとの認識を示した。スペインでも解禁する自治体が相次いでいる。

 仏中高校長組合のフィリップ・バンサン書記長は取材に「法律はできたが、現状では各校とも対策を模索している段階。(学習効果を上げるために)授業での使用も可能だが、ルールを作る必要がある」と述べ、法制化によって議論が広がることを期待した。(パリ・竹田佳彦)

◆日本 △ 原則禁止 震災後変化も

 日本の文部科学省は二〇〇九年、小中学校での携帯電話持ち込みを原則禁止とする通知を出している。ただ東日本大震災などの災害を受け、認める学校は増加傾向。民間調査機関の今年の調査では、中学生の二割以上が条件付きを含め、持ち込みを許可されていた。

◆米国 ○ 安全重視で容認拡大

 米国では校内への携帯電話の持ち込みを認める動きが広がっている。連邦政府機関のまとめでは、校内での携帯使用を禁じる公立学校は二〇〇九年度の91%から、一五年度には66%まで大幅に減った。

 ニューヨーク市は一五年春、「子どもの安全が高まる」として携帯の持ち込みを解禁。これを主導したデブラシオ市長は父親としての経験から「保護者は子どもに電話したりメールを送ったりできるべきだ」と主張し、解禁の意義を「家族の尊重」とも述べた。

 細かな運用方法は各校の取り決めに委ねられている。市中心部マンハッタンにある小学校では授業中、携帯をかばんの中に入れさせる一方、電話がかかってくれば廊下で通話することも認めているという。

 しかし、容認の流れに異を唱える専門家もいる。

 十代の娘二人の父親でもある米心理学者リチャード・フリードさんは、校内への携帯の持ち込みには「弊害が有益さを上回る」と反対の考えだ。

 ソーシャルメディアやメールを中心とした携帯依存で学業がおろそかになるほか、抑うつ傾向との相関関係も指摘されているとして、「保護者は利便性だけでなくリスクの大きさも理解すべきだ」と警鐘を鳴らしている。 (ニューヨーク・赤川肇)

 

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