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【国際】

ロヒンギャ、遠い故郷 ミャンマー、進まぬ帰還

ミャンマー西部マウンドーの市場で、現状での帰還に不安を示すロヒンギャの仕立屋の男性(右)

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 ミャンマー西部ラカイン州で迫害を受け、隣国バングラデシュに逃れたイスラム教徒少数民族ロヒンギャの帰還が進まない。同州ではロヒンギャの村の痕跡が薄れ、民族融和の雰囲気は低調のまま。治安も不安定さが増し、再定住に向けた道筋は見えない。 (ラカイン州で、北川成史、写真も)

 一月下旬、ロヒンギャの主な居住地域ラカイン州北部を訪れた。普段は取材活動が制限され、記者がミャンマー政府の案内で訪れるのは昨年五月以来二度目。州都シットウェから州北部マウンドーまで約百キロを船と車で移動した。

 前回は車窓から、焼け残った柱らしき物が目に付いた。治安部隊などに焼き打ちされたロヒンギャの村と思われた。だが、今回はさほど目立たない。草木が伸びて家屋の跡を隠し、時間の経過を感じさせた。

 二〇一七年八月、ロヒンギャの武装勢力と治安部隊が衝突後、同州に推計約百万人いたロヒンギャのうち、七十万人以上がバングラデシュに逃れたとされる。

 両国は昨年一月の帰還開始で合意したが、ごく少数が戻っただけ。同年十一月とされた本格開始も、ミャンマーでの安全への懸念から希望者が現れず、再度延期されている。

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 マウンドーの市場で今も店を営むロヒンギャらに聞いた。時計店の男性(30)は「客が減り、不景気になった」と帰還を望むが、仕立屋の男性(25)は「親戚や友人が何人殺されたか分からない。帰還には安全の確保が必要だ」と訴える。

 市場前の屋台には、ロヒンギャとの軋轢(あつれき)がある仏教徒少数民族ラカイン人の女性四人がいた。「戻ってきてほしくない。不幸な事態が起きる」と口をそろえ、民族間の溝をにじませた。

 マウンドーの東方のロヒンギャの村では、二千人超の住民の約三割がバングラデシュに逃れた。村長のアユ・アリさん(38)は「市民権と未来を与えれば帰ってくる」と、ミャンマーで不法移民扱いされてきたロヒンギャの地位の保障を求めるが、市民権付与の議論は進んでいない。

 州北部では昨秋、自治拡大を求めるラカイン人の武装勢力と国軍の衝突が激化。ミャンマー当局者は帰還が遅れる要因に挙げる。

 バングラデシュ・ブラック大のファルハーン・アフマド講師は「ロヒンギャが納得しない限り帰還は始まらないが、ミャンマー政府は達成への意志が欠けている。あらゆる機会を先延ばしに利用しないか心配だ」と指摘する。

 バングラデシュ政府は、難民のうち約十万人を無人島に移す計画を立てている。一月、難民キャンプや無人島を視察した国連特別報告者の李亮喜(イヤンヒ)氏は「ミャンマーは帰還に向けた状況を作らず、(治安部隊などが)ロヒンギャへの暴力を続けている」と批判するとともに、問題長期化を見越し、人権に配慮した対応をバングラデシュに求めた。

1月24日、ミャンマー西部マウンドー郊外で警戒する国境警備隊。見張り塔の先はバングラデシュだ

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