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【国際】

クルド少数派 ヤジド教徒救出、活発化 3000人消息不明

 【カイロ=奥田哲平】シリア東部で過激派組織「イスラム国」(IS)の最後の拠点バグズ村が今月下旬に制圧されたのを受け、ISに拉致されたイラクのクルド人少数派ヤジド教徒の救出活動が活発化している。支援団体によると、二月上旬以降に女性や子ども約百五十人が発見され、家族に引き渡されたという。

 ISは二〇一四年八月にイラク北部シンジャールで、ヤジド教徒の女性ら約七千人を拉致。女性は主に性奴隷として売買され、子どもは軍事訓練を受けて戦闘員に仕立てられた。今も約三千人の消息がわかっていない。

 ISが最後の支配地域として立てこもったバグズ村では、二月上旬からクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」による掃討作戦が本格化。これまでに六万人以上が脱出。そのうち五千人がIS戦闘員で、その家族は三万人近くに上る。難民キャンプに到着して身元確認を受ける中で、IS戦闘員の家族となったヤジド教徒が名乗り出ているという。名乗り出た教徒は、国境でSDFからイラク側に引き渡される。

 救出活動に奔走するヤジド教徒のハリド・ターロさん(46)は「同胞を助ける大きなチャンス」と期待し、身元を引き受ける家族を捜したり、受け渡しに立ち会う。ターロさん一家も十九人が拉致され、いとこら九人が行方不明のまま。妹ライラさん(31)は一七年の解放後にISの残虐性を告発し、昨年の「マザー・テレサ社会正義賞」を受賞した。

 ハリドさんによると、性奴隷となってイスラム教に改宗させられた女性は名乗り出るのを恐れる傾向にある。「女性たちは『ISの子どもを産んだ女性を家族は認めない』などと脅されている」。IS戦闘員の家族として処罰される可能性もあり、「収容所などに送られれば、取り戻すのは難しくなる」と救出を急ぐ。

 解放後の支援も課題だ。今月上旬に見つかったマーゼム君(13)は九歳の時に拉致され、IS戦闘員の手伝いとして働かされていた。父は殺害され、きょうだい四人は行方不明のまま。ハリドさんは「生存者として祝福される一方で、ISに洗脳された思想が残り、頭の中が混乱しているようだ」と話し、リハビリの必要性を強調する。

<ヤジド教徒> ゾロアスター教(拝火教)やキリスト教などがまじった独自の宗教を信仰する。イラク北部シンジャールに約60万人が暮らしていたが、「イスラム国」(IS)が2014年8月に侵攻。不信心者とみなして殺害や奴隷化を正当化し、女性や子どもら7000人を拉致した。被害を告発したナディア・ムラドさん(26)が昨年のノーベル平和賞を受賞した。

 

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