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【国際】

中国市場♪人気急上昇 日本のエンタメ進出相次ぐ

米津玄師さんにとって初海外ライブとなった上海公演のポスター(C)REISSUE RECORDS

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 日本のエンターテインメント業界の中国進出戦略に変化の兆しが出ている。今が旬のアーティストが相次いで中国でライブを開催。これは以前にはなかった現象だ。背景には中国市場の著しい成長ぶりがある。日本のエンタメ業界にとって、中国は「主戦場」になっていくかもしれない。 (上海・浅井正智)

 三月十九日夜、一万八千席の上海メルセデス・ベンツ・アリーナのステージに現れたのは、若者に絶大な人気を誇るシンガー・ソングライター米津玄師(けんし)さんだ。初の海外公演。アリーナ席に陣取っていた中国人女子大学生(20)は「日本でもほとんどライブをやらないのに、上海に来てくれるなんて」と感激した。

 日本同様、中国でもカリスマ的存在で、チケットは最安値で七百八十元(約一万三千円)。オフィシャルサイトでは一分半で完売し、ライブ当日は会場周辺にダフ屋がたむろした。

 振り返れば、これまで中国公演をした日本人アーティストの中には、人気のピークが過ぎた人も少なくない。だが二〇一七年以降、ロックバンドのRADWIMPSや乃木坂46が中国ライブを開いた。そして今回の米津さん。脂の乗りきったアーティストぞろいだ。

 日本のエンタメの中国進出を手がけるアクセスブライト(本社・東京)の柏口之宏社長は「日本でもスケジュールが取りにくいアーティストを中国に連れて来ることで、日本の存在感を高めていく」と進出戦略の変化を強調する。

 背景には、やはり十四億人の巨大市場の存在がある。中国の音楽市場規模は現在、世界十位だが、月額八元で三百曲をダウンロードできる音楽配信アプリが急速に浸透。「薄利多売」を武器に、市場の伸びしろは極めて大きい。

 日本の音楽市場の成長には限界がある。加えて、日本では来年にかけて東京五輪に関わる予選や大会が行われ、大人数収容の会場が不足する。「台湾やタイでは市場が小さいし、チケット代も高くできない」(柏口さん)ことからも、目は自然と中国に向く。

 一方で、中国には日本にない規制など中国特有の難しさがついて回る。

 米津さんのライブ中盤、アリーナ席で赤い光を放つサイリウム(光る棒)を振る男性を警備員が制止した。サイリウムは保安上の理由で持ち込みが禁止されている。歌詞の内容も審査を受ける。細かいことを一つずつクリアしないといけない。審査当局との人間関係も中国では重要な意味を持つ。柏口さんは「苦労を乗り越え、日本のエンタメを持ち込むことで、ノウハウが蓄積されていく」と、むしろプラスに捉える。

 ライブ終盤、米津さんが昨年の紅白歌合戦でも披露した「Lemon」を歌い始めると、観客は自分のスマートフォンの明かりをつけ、左右に振りだした。規制を賢くすり抜ける方法を一番知っているのは、他ならぬ客のようだった。

 音楽以外でも中国のエンタメ市場は伸長著しい。ゲーム市場は世界の27%に当たる約4兆2200億円ですでに世界トップに立つ。映画も中国初のSF作品「流浪地球」の記録的ヒットで、今年2月だけで110億元(約1820億円)と日本の年間売り上げに匹敵する額に。日米とも横ばい状態が続く中、中国は今年中にも世界最大の映画市場に躍り出る可能性がある。

 

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