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【国際】

サウジの改革に暗雲 記者殺害半年、真相解明進まず

 【カイロ=奥田哲平】サウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏が昨年十月にトルコで殺害されてから半年がたった。サウジのムハンマド皇太子が殺害を指示したとする疑惑はくすぶるが、真相解明が進まないまま幕引きされる公算が大きい。一方、サウジの人権抑圧に欧米社会は厳しい目を向け、皇太子が掲げてきた改革に狂いが生じている。

■密室で進む裁判

 カショギ氏は昨年十月二日、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館内で、情報機関が送った工作チームに殺された。トルコのエルドアン大統領は、ムハンマド皇太子を念頭に「最高レベルから命令が出ていた」と指摘するが、サウジは情報機関が暴走したと主張する。

 サウジ検察は殺害に関与した容疑者二十一人を拘束し、今年一月に被告十一人の公判が始まった。被告の名前や審理の経過は一切明らかにされず、起訴されなかった十人に対する捜査結果も不明。カショギ氏の遺体が今も見つからないまま、サウジは密室で司法手続きを終わらせ、関心が薄れていくのを待つ狙いだ。

 だが、人権活動家の相次ぐ拘束に対して国際的に非難の声が高まるなど、事件の悪評が尾を引きそうだ。

■中止された事業も

 サウジは二〇一六年から皇太子主導で石油依存経済からの脱却を進め、「普通の国」への変革を目指してきた。成否を握るのは欧米諸国の支持や外国企業の事業展開だったが、事件は信頼失墜を招いた。

 サウジは一月、てこ入れ策として今後十年間で四千二百七十億ドル(約四十七兆円)の投資を見込む産業戦略を発表。さらに二月には皇太子がアジアを歴訪し、中国側と総額二百八十億ドルに上る経済協力を結んだ。

 それでも不信の払拭(ふっしょく)は容易ではない。米ハリウッドの大手芸能事務所エンデバーは三月、サウジの政府系ファンドと結んでいた四億ドル(約四百四十五億円)規模の事業中止を決めた。国営石油会社サウジ・アラムコの新規株式公開(IPO)で生まれる一千億ドルを改革の原資とする計画も、二一年にずれ込んでいる。

■どうなる王位継承

 注目が集まるのが、事件関与を疑われるムハンマド皇太子の立場だ。英ガーディアン紙は三月、皇太子が過去二週間で閣議や外交上の会合を欠席し、財政運営権限の一部を取り上げられたと伝えた。

 後ろ盾のサルマン国王との関係がぎくしゃくしているとの報道もあるが、専門家の見方は分かれる。カイロ・アメリカン大のサイド・サデク教授は、昨年末にアッサーフ元財務相を外相に起用し、実弟ハリド王子を国防副大臣に任命した動きを「皇太子に一極集中した権力を分散し、制御できるようにした」とみる。

 一方、ウマイヤ研究戦略センター(ヨルダン)のナビル・アトウム所長は、王位継承を決定する忠誠委員会は皇太子の影響下にあるとして「ライバルだった王子たちは自宅軟禁下に置かれている。現在の王室内に分断はない」との見方を示した。

 

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