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【国際】

あすイスラエル総選挙 ユダヤ人主義の新法が争点 アラブ系住民、反発

イスラエル北部ハイファ近郊で4日、ユダヤ人国家法を批判するドルーズ派のサアブ・アンワールさん

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 イスラエルの総選挙(国会定数一二〇、比例代表制)が九日、実施される。争点の一つになっているのが、昨年七月にネタニヤフ首相(69)率いる右派が制定した「ユダヤ人国家法」だ。新法はユダヤ人だけが民族自決権があると規定。具体的にユダヤ人以外の参政権などを制限する条項はないが、国民の約二割を占めるアラブ系住民には戸惑いと反発が広がっている。 (イスラエル北部ハイファで、奥田哲平、写真も)

 「この法律は私の国籍を奪ったようなものだ。イスラエルに住んでいるだけで、国民じゃないといわれていると感じる」。イスラエル北部ハイファ近郊に暮らすアラブ系のイスラム教少数派ドルーズ派の会社経営サアブ・アンワールさん(51)が憤慨する。

 独自の教義を持つドルーズ派は人口の1・6%(十四万人)。イスラム教の中でも異端視され、歴史的な経緯からアラブ系の中で唯一兵役に就く。アラビア語が話せるため、パレスチナ自治区との境界に配置されることが多く、「国に尽くしている」との誇りが強い。アンワールさんも六年前まで二十七年間イスラエル軍に勤めた元准将だ。

 退役後も無人機の製作に携わる企業を経営するなど、軍との関わりは今も深い。二〇〇九年以来続くネタニヤフ政権は「軍事的、経済的に大国並みになった」と評価するが、ユダヤ人とそれ以外の国民の分断を助長したと批判的だ。「買い物に行ってアラビア語を話すと、周りは飛び上がるように驚く。アラブ人は化け物じゃないのに…」

 ネタニヤフ政権率いる与党リクードの法制定の狙いは右派の政権基盤固め。だが、ドルーズ派には従来リクード支持者も多く、「裏切られた」との声が漏れる。イスラエル北部ラミに暮らす社会福祉士ワリード・ラティフさん(54)は「選挙結果で現政権を罰しなければならない」と左派系政党に投票するつもりだ。

 一方、ほかのアラブ系住民には投票忌避の動きが広がっている。だが、政治評論家ワディア・アワウデ氏(55)は「アラブ系の投票率が50%程度に下がれば、結果的に右派の議席が増え、ネタニヤフ氏を助けることになる」と指摘する。アラブ系政党が二つに分裂した影響もあり、現国会で第三勢力(十三議席)だったアラブ系は世論調査で、十議席前後に減る見通しだ。候補者の一人イマーン・ヤシーンさん(55)は選挙集会で「ボイコットせず、怒りを行動で示してほしい」と訴える。

<ユダヤ人国家法> 憲法のないイスラエルで、一般法の上位に位置付けられる基本法の一つとして制定された。イスラエルは「ユダヤ人の歴史的な郷土」とし、公用語からアラビア語を外し、ヘブライ語のみと定めた。東エルサレムを将来の独立国家の首都と位置付けるパレスチナに対し、東西エルサレムを「首都」と明記した。ユダヤ人入植地推進も掲げた。宗教や人種の平等をうたった1948年の独立宣言に反するとの指摘も根強い。

 

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