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【国際】

インドネシアで開通 MRT 電車以外も日本流

ホームに入ってくるMRTの車両

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 インドネシア初となる地下鉄を含む都市高速鉄道(MRT)が三月二十四日、首都ジャカルタで開業した。日本が全面支援し、世界最悪といわれる交通渋滞の緩和策として期待される。乗車してみると、日本的特徴を取り入れた駅や車内は開業を喜ぶ市民らの観光スポットと化していた。 (ジャカルタで、北川成史、写真も)

 支援した国際協力機構(JICA)によると、開業したのは中心部と南部の住宅地をつなぐ「南北線」の一部区間一五・七キロ。地下区間が五・九キロ、高架区間が九・八キロで、十三駅を約三十分で結ぶ。車だと一時間程度かかる。日本のゼネコンと地元建設会社の共同事業体が建設し、車両は日本車両製造(名古屋市)が納入。ジャカルタ特別州営企業が運営する。

 円借款約千二百五十億円が利用され、追加費用も発生。土地収用が遅れ、耐震基準が変更されたが、三月中の開業は延ばせず、夜間工事などを実施したからだ。限られた時間で試運転や職員研修までこなした過程を、JICAの安達裕章さんは「駅伝で全員が区間新記録で走り、たすきをつなぐような大変さだった。オールジャパンで走り切った」と例えた。

 三月開業は、四月十七日の大統領選前に成果を見せたいジョコ大統領がこだわったとされる。十キロ当たり一万ルピア(約八十円)の運賃が決まり、商業運転が始まったのは今月一日。それまでは無料で、「見切り発車」と評された。

 地下区間のスナヤン駅から十日に乗車してみた。地上入り口から階段を下り、まず目に付いたのはコンビニとファストフード店。日本の鉄道事業のノウハウは車両や設備だけでなく、「駅ナカ」の利便性もソフト面で取り入れられている。

 人口の約九割を占めるイスラム教徒のため、駅には礼拝室が設置された。ホームは転落防止用ドアを備え、床には整列場所が線で大きく示されている。

 南に向かう六両編成の電車が静かに到着。乗り込むと、車内の天井に監視カメラがあるほか、警備員二人が目を光らせていた。

 電車は間もなく地上に出て、高架区間に入った。チプテラヤ駅を過ぎると、高速道をまたぎながら約九十度カーブする。高速道越えの約八十メートルは橋脚がなく、緻密なバランスの計算で力を保つ。安達さんは「日本のゼネコンが持つ技術の真骨頂」と誇る。

 終点ルバックブルス駅に到着すると、乗客がドッと降りた。自動改札機には長蛇の列。慣れないためにICカードを何度もタッチし、エラーが続発していた。

車内で記念撮影するイスラム教徒の女性ら

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 降車客の様子をよく見ていると、多くの人は再び改札を入って、北向き電車で折り返し。記念乗車だった。その一人のスバルティニさん(61)は「清潔で快適。買い物に使いたいわ」と顔をほころばせた。駅の壁には、地べた座りや飲食を禁じるステッカーが貼られている。ピクニック気分の人たちがいるためだという。

 記者も折り返し、改札を入ると、上りエスカレーターの足元にインドネシア語と英語で表示が。左が「立つ」、右が「歩く」。地元関係者が開業前に日本を視察し、整然と片側を開けて乗ることに感銘を受けたらしい。日本では最近、機器への負担や安全性から議論を呼んでいるのだが。

 再び乗車すると、スカーフ姿のイスラム教徒の女性グループがプラスチック製の座席に座り、はしゃぎながら、自撮(じど)りをしていた。

 北の終点ホテルインドネシア前ロータリー駅から地上に出ると、入り口が階段六段分、地面より高くなっている。北に行くほど海抜が低いジャカルタの雨期の水流入防止策だった。

 通勤に利用するニンディタさん(26)は「片道一時間の自動車通勤が三十分に短縮でき、毎月の費用は百三十万ルピア(約一万四百円)から二割以下になる」と喜び、利用者にはおおむね好評のようだ。今月初旬で一日あたりの利用者は四万四千人。今年中に十三万人程度に伸びると見込まれる。

 南北線の延伸予定区間七・八キロは今年中に着工予定。東西線三一・六キロも計画されている。

エスカレーターの乗り口にある「立つ」と「歩く」を分ける表示

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