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【国際】

IS、いまだ残る影 シリアで完全制圧1カ月

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 シリア東部に残った過激派組織「イスラム国」(IS)の最後の支配地域が消滅してから二十三日で一カ月。強権的なIS支配から解放されたものの、シリアは長引く内戦で復興が進んでいない。生活環境への不満や民族間の対立感情で、IS復活を許す不吉な芽が見え隠れする。 (カイロ支局・奥田哲平)

 ISが「首都」と称して拠点を置き、一昨年十月に解放された北部ラッカ。アラビア語教師アフマド・ガッセムさん(45)は電話取材に「水供給は戻ったが、電気がない。三分の二以上の建物が戦闘で破壊され、住民は自力で再建するほかない。未来は暗いままだ」といら立ちを隠さない。

 ガッセムさんが不安を覚えるのは治安状態だ。「強盗や拉致が横行し、薬物が流通する。ISの悪夢が除去されたのは喜ばしいが、当時は夜間に外出しても強盗に遭うことはなかった」と話した。

 民族間に残る不和も「IS統治の時代」を好意的に見る背景の一つになっている。ラッカはアラブ系住民が多数派だが、ISを掃討した少数民族クルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」が事実上統治する。

 アラブ系のガッセムさんは「SDFは若者に志願兵になるよう強制する。アサド政権も徴兵制だった。ISは誰にも強制しなかった」と漏らす。アサド政権に長年冷遇されてきたクルド人勢力はIS掃討に乗じ、全土の三割まで勢力圏を拡大した。

 ISの最大拠点イラク北部モスルでは二〇一四年、統治が満足に及ばない混乱に加え、イスラム教スンニ派住民に対するシーア派政権の抑圧的姿勢がISの占拠を許す結果を招いた。複雑に民族や宗派が入り交じる危うい状況はシリアも同じ。復興と住民間の融和が進まない中、イスラム過激派が育つ土壌が生まれる。

 ISは支配地域を失ったが、一部がシリア中部の砂漠地帯にとどまっているもようだ。シリア人権監視団(ロンドン)は二十日、直近二日間でISと衝突した政権軍の兵士三十五人が死亡したと伝えた。IS残党が中東や東南アジアなど各地に分散したとみられ、ISに忠誠を誓う地元勢力と結び付いてテロ実行能力が増す危険性も指摘される。

 米メディアによると、スリランカで二十一日に起きた連続爆破テロでは、関与が指摘されるイスラム過激派「ナショナル・タウヒード・ジャマア(NTJ)」が、ISとつながりがある疑いが出ている。

 

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