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【国際】

「捨てられた土地」 照らす太陽光発電

半円状の鋼鉄シェルターに覆われた事故現場のチェルノブイリ原発4号機隣に設置された太陽光パネル=ソーラー・チェルノブイリ社提供

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 旧ソ連(現ウクライナ)で起きたチェルノブイリ原発事故から二十六日で、三十三年を迎える。放射能で汚染された原発から半径三十キロ圏内の立ち入り制限区域では、残った送電網を生かし、自然エネルギー発電計画が進められている。昨年夏からは太陽光発電で、電力供給を開始。誰も住めなくなった土地の再生の象徴にしようと取り組んでいる。

 立ち入り制限区域の広さは約二十六万ヘクタール(二千六百平方キロメートル)で、神奈川県の面積にほぼ匹敵する。ウクライナ政府は二〇一六年、そのうち85%を自然保護地区に指定。残る15%にあたる爆発事故が起きた4号機周辺地域を産業活用地区に指定した。

 産業の用途が限られる中、浮上したのが、自然エネルギーだった。立ち入り制限区域管理庁のビタリー・ペトルク長官は「送電網があり、太陽光パネルが設置しやすい昔の畑も周辺に残っていることから条件が適していた」と話す。政治的に対立するロシアへのエネルギー依存の解消を図る国の方針とも合致した。

 太陽光発電は二十四万世帯分にあたる一・二ギガワットの発電量を目指し、二千五百ヘクタールの土地を充当。賃料を相場より安く設定して事業者を募集し、ウクライナとドイツの合弁会社「ソーラー・チェルノブイリ」が第一号となった。

 同社は一七年十二月、4号機の隣に、二百世帯分にあたる発電量一メガワット分の太陽光パネルを設置。昨年七月には国と契約を結び、電力供給を始めた。4号機周辺の放射線量は事故時の一万分の一に下がったが、キエフの基準値の三十倍近い毎時三マイクロシーベルト以上。同社のエフゲニー・ワリャーギン最高経営責任者(CEO)によると、長時間の被ばくを防ぐため、設置作業には通常の用地より三倍の人員をかけたという。

 今後二年以内に百メガワットの発電を目指すが、設置や運営コストは高く、計八千万ユーロ(約百億円)を見積もる。ワリャーギン氏は「利益が少なくても、企業の社会的責任として取り組んでいる。この国のビジネスマンの使命だ」と強調。すでに日本からの視察もあるといい、「福島でも同様の事業を行うなら技術協力したい」と呼び掛ける。

 制限区域では太陽光発電に加え、近く風力発電の試験事業も開始される。4号機は一六年十一月、耐用百年の鋼鉄製シェルターに覆われ、二三年までに構造物の撤去を終える目標だが、その先の核燃料除去は数百年単位の道のりだ。ペトルク長官は「現状で立ち入り制限が解かれる可能性はないが、自然エネルギー発電で、『捨てられた土地』をもう一度生き返らせたい」と意気込みを示している。

 (ウクライナの首都キエフで、栗田晃)

 <チェルノブイリ原発事故>1986年4月26日、旧ソ連ウクライナのチェルノブイリ原発4号機が原子炉の欠陥と運転員の熟練不足から、試験運転中に爆発。ベラルーシ、ロシア、欧州にも放射性物質による汚染が広がった。消火などに当たった数十人が急性放射線障害で死亡し、原発から半径30キロ圏内の立ち入り制限区域の住民12万5000人ら計33万人が避難を強いられた。

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