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【国際】

女性記者銃撃死「新IRA」 離脱混乱、過激化に拍車か

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 【ロンドン=沢田千秋】英領北アイルランドの暴動で地元の女性ジャーナリストが銃撃され死亡した事件は、約二十年前まで続いた紛争で多数のテロ事件を起こしたアイルランド共和軍(IRA)の新組織「新IRA」の犯行とされる。専門家は、英国の欧州連合(EU)離脱による混乱を背景に、IRAの残党が貧困地域の若者を過激思想に染めているとみる。

 犠牲となったライラ・マッキーさん(29)は十八日、英統治に反発する暴動を取材中に銃弾を受け死亡した。二十四日に行われた葬儀には、英統治を巡り対立する北アイルランドの政党党首、メイ英首相、アイルランドのバラッカー首相も参列。司祭は「ライラは境界線を打ち破った。これは彼女の遺産だ」とたたえた。

 一九六〇年代以降、約三十年間続いた紛争では、英統治を望むプロテスタント系住民とアイルランド共和国への併合を求めるカトリック系住民が衝突し、約三千六百人が死亡。一九九八年、両地域の国境の自由往来などを保障した和平合意の締結後、IRAは武装解除し、政治活動に傾注した。

 エクセター大のジェマ・クラーク講師(現代アイルランド史)は「新IRAは二百〜三百人規模。うち半数は紛争中に服役し、出所後、IRAの政治路線と和平合意に反発した武闘派メンバーで、残り半数の若い世代に過激思想を植え付け、武器の使い方、爆弾の作り方などを教えている」と話す。今年に入り、車両爆破、発火装置入り封書の送付など新IRAとみられる犯行が続発していた。

 今回の事件現場は、国境の町ロンドンデリーで、貧困地域の一つとされるクレガン地区。事件に関与したとして警察はこれまで十代二人と五十代の男女を拘束したが、いずれも釈放された。容疑者は特定されていない。

 クラーク氏は「紛争や和平プロセスを知らない若い世代は、過去の闘争への憧れに加え、和平合意後に活発な投資で発展する首府ベルファストに比べ、恩恵を受けられず貧しいままの境遇に不満がある」と指摘。その上で、「彼らの過激化とEU離脱問題の混乱は偶然の一致ではない」とする。

 英議会は離脱後の北アイルランド国境管理復活を防ぐための措置に反発しており、離脱交渉は行き詰まっている。アイルランド共和国への帰属を信条とする新IRAにとって、国境管理は共和国との分断を意味するだけに、クラーク氏は「七〇年代から銃を隠し持つ世代が若い世代に『見ろ、これが和平合意をほごにする英国のやり方だ』と言い、過激化させている」と分析。離脱を巡り、住民の恐怖は募っている。

 

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