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【国際】

<メディアと世界>「町のニュース欄なくなった」 住民の政治分断加速も

米ニュージャージー州ポールズボロ町で、「大きな事件でもない限り記者は来てくれない」と語るスティーブンソン町長=白石亘撮影

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 全米初の「ニュース補助金」をニュージャージー州が導入するのは、信頼できるニュースが消えれば、選挙など民主主義の基盤を揺るがしかねないとの危機感からだ。新聞など伝統的メディアの衰退は「政治の分断」にもつながった。ニュース制作をいかに支えるべきか、模索は始まったばかりだ。 (アメリカ総局・白石亘)

 「昔は議会が開かれれば記者が来てたし、地元紙にはうちの町のニュース欄もあった。でもどっちもなくなったよ」。州南部にある人口六千人のポールズボロ町のゲイリー・スティーブンソン町長(59)はこう嘆く。地元紙は経営難からリストラが進み、今は一人の記者が同町を含む二十六町村の人口二十九万人の地域をカバーしているという。

 同州最大手スター・レジャー紙は二〇一六年までの十年間で読者が65%減少。ニュースをネットで読む人が増え、広告収入もグーグルやフェイスブック(FB)に流れる。メディアを取り巻く構造の変化で、州内では五年間で千人以上の記者が解雇されたという。

 スティーブンソン町長は空き家の取り壊しなど治安対策に力を入れるが、「大きな事件でもない限り記者は来てくれない」と指摘し、代わりにFBでの情報発信を強化する。だがFBは偽ニュースが流されたり、大量の個人データを流出させるなどの不祥事が相次ぐ。住民には「FBはうわさも多く、投稿を信用できない」と懸念も多い。

 一方で、町でも多くの人がニュース専門局CNNやFOXで全米のニュースを見ているのが実情。町長は「トランプ大統領がくしゃみをしたといったたぐいの報道も多く、人々はスポーツ観戦のように共和党と民主党のどちらかを応援するようになった」とまくしたて、「嘆かわしいことだ」と吐き捨てるように言った。

 米国では地元ニュースが減った地域ほど、政治の分断が進んだとの研究がある。有権者が全国ニュースを基に政党名で投票する傾向が強まるためだ。知事選や上院議員選などを同時に行う中間選挙で、有権者が異なる政党に投票した割合は全米で一九九八年の27%から昨年は10%に低下。この割合が低下すれば有権者がより党派的になり、政治が二極化した目安とされる。

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 ローカルニュースを増やす補助金に新聞業界は反対だが、地元のモンクレア大メディア協力センターのステファニー・マリー所長は「人々はニュースを欲しがっているが、ニュースにお金を払おうとしなくなった。メディアは単独では生き残れない」と語る。ニュース制作が商業ベースで成り立たない以上、州政府の介入はやむを得ないとの立場だ。

 州議会多数派の民主党リーダー、ルイス・グリーンウォルド州下院議員(52)は「ニュースへの投資が民主主義を守ることにつながると信じている」と強調。「メディアの収入減を補うのが目標ではなく、テクノロジーの発展で変わらざるを得ないメディアがどうすれば経営を持続できるようになるのか、研究することに資金を使うべきだ」と語る。

 

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