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【国際】

<独立国「ワ」 ミャンマーの矛盾>(下)巨大カジノに舞う人民元 中国と蜜月、他民族は警戒

ミャンマー東部パンサンの中国語の看板が並ぶ中心街=4月16日

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 「黄金会」と中国語で店名が掲げられた玄関を入ると、巨大カジノが広がっていた。ポーカーやブラックジャックのテーブルが五十台以上、客は少なくとも五百人はいるだろうか。紫煙が立ち込め、人民元の紙幣が飛び交う。

 少数民族ワの武装勢力「ワ州連合軍」(UWSA)が支配するミャンマー東部ワ自治管区。四月中旬、中心都市パンサンの娯楽ビルを訪れた。駐車場には隣接する中国雲南省ナンバーの車が目に付く。住民に加え、カジノ禁止の中国からの客がカネを落としていた。

 町は夜中もネオンが輝く。UWSAの元兵士チャン・フォーさん(68)は「あばら家ばかりの数十年前と大違いだ」と感慨深げ。

 レストラン、衣料品店、風俗店。中国語の看板が並び、やりとりはワ語か中国語で、ミャンマー語はあまり通じない。どの国にいるのか、首をひねりたくなる。

 中国は一九六〇年代以降、UWSAの前身で反政府勢力のビルマ共産党を支援してきたが、八九年の天安門事件で欧米との関係が悪化し、民主化弾圧で似た立場のミャンマー政府に接近。中国の支援が止まった同党はUWSAなどに分裂した。

 UWSAが同年、ミャンマー政府と個別に和平を結び、戦火がやむと、中国からワ自治管区への投資が加速。鉱山や天然ゴムのプランテーション開発、建設事業に資金が流入した。

 大半の外国人にとって「秘境」のワ自治管区だが、中国人への敷居は低い。

 食堂を営む女性〓桂華(とうけいか)さん(53)は昨年十二月、中国南部貴州省から姉と移住した。わずか二千元(約三万三千円)で、ワ自治管区当局から無期限の在留許可を得たと話す。店の売り上げは多い時で月一万元以上。その他、中国人が出資する鉱山会社から鉱石を買い、海外に売って稼ぐという。「食べ物も言葉も中国のよう。暮らしやすい」と笑う。

 UWSA幹部のチャオ・グオ・アン氏は本紙の取材に「われわれと中国は兄弟だ」と強調し、軍事、経済両面での関係の深さをにじませる。

 中国にとっても広域経済圏構想「一帯一路」で、ワ自治管区のあるシャン州は重要な地域だ。ミャンマー西部のインド洋沿岸から同州を抜けて雲南省まで、中東産の石油を送るパイプラインが稼働している。

 ワ自治管区が中国と蜜月を続け、中央政府と隔絶した統治機構をつくったうえに、「州」への格上げを求める現状に対し、他民族の反発や警戒感は強い。

 「ワだけ特別扱いすれば、納得しない民族が出る」。ワ自治管区の西方、シャン州北部の中心都市ラショーの運転手キン・ゾーさん(54)は顔を曇らせる。ミャンマーには百以上の民族がいるとされる。自身も父がシャン人で母がカレン人。民族構成の複雑さを実感している。「旧ユーゴスラビアのような混乱と分裂は起きてほしくない」と融和に願いを込めた。 (シャン州で、北川成史、写真も)

<天安門事件とミャンマー> 1989年6月、中国・北京の天安門広場を拠点に民主化を求めた学生らのデモ隊に人民解放軍が発砲し、武力鎮圧。当局は死者数を319人とするが、実際は1000人以上との見方が多い。前年の88年、ミャンマーでも国軍が民主化運動を弾圧。欧米から経済制裁を受けるなどした両国は、孤立回避のため接近していった。

※〓は登におおざと

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