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【国際】

医療問題訴えた司令官解任 米グアンタナモ 拘束長期化

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 米国が「敵戦闘員」とみなした外国人らを長期拘束しているグアンタナモ米海軍基地(キューバ東部)収容施設の最高責任者が先月二十七日、解任された。収容者の多くは、訴追すらされないまま十数年の拘束が続いており、高齢化に伴う健康問題が深刻化。トランプ政権が拘束継続の方針を示す中で、施設の統合任務部隊司令官だったジョン・リング海軍少将は、収容者が医療面で十分な対応を受けていない現状を米メディアに訴えたため、軍上層部の不興を買った可能性がある。 (嶋田昭浩)

 ■ジュネーブ条約

 「指揮能力への信頼を失い、更迭された」。基地を管轄する米南方軍は四月二十九日の声明で、リング司令官の解任を発表した。具体的な経緯を明らかにしなかったが、直前には更迭の背景とみられる出来事が起きていた。

 米ニュースサイト「ディフェンス・ワン」は二十六日、「グアンタナモがテロ容疑者の老人ホームに」と題する記事を掲載。リング少将が、捕虜の扱いを定めたジュネーブ条約を引き合いに「米兵に与えるのと同じ医療を収容者にも施さなければならない」と指摘。「糖尿病の前段階の収容者が多数いる。ここで透析治療を行うことになるのだろうか」と問題提起の発言をしたことを報じていた。最高齢の収容者は七十一歳だという。

 十分な医療を提供するには、発症した収容者を米国本土の医療機関へ搬送するか、多額の費用をかけて治療器具を基地へ輸送する必要が生じる。与党・共和党の議員の多くは安全保障上の懸念を理由に本土への移送に強く反対しており、少将の言葉は、政権ができれば触れたくない政治課題を表舞台に引っ張り出す内容だった。

 ■施設存続計画

 「敵戦闘員」の長期拘束は、共和党のブッシュ元政権が二〇〇一年秋のアフガニスタン攻撃をきっかけに開始。米中央情報局(CIA)が運営した世界各地の秘密収容所で、テロ関連情報を引き出すために水責めなどの拷問を行った。

 秘密収容所の設置や拷問を禁じた民主党のオバマ前政権が釈放を進めたため、これまでにグアンタナモで拘束された計七百八十人のうち七百三十一人が母国や第三国へ移送されたが、今も四十人の拘束が続く(九人は所内で死亡)。

 懸賞金目当ての虚偽の密告などに基づいて捕まった「無実」の収容者も多いとされ、国際人権団体リプリーブによると、非常にゆっくりしたペースで進む軍事裁判にかけられているのは九人。残る三十一人は訴追すらされていない。だが、米紙ニューヨーク・タイムズは、トランプ政権が四三年までの収容施設存続計画を策定中だと伝えている。

 リプリーブのケイティー・テイラー副代表は本紙に「グアンタナモは不正義の象徴になった」と強調。閉鎖に向け「米国の同盟国」としての日本の役割に期待し「(収容者を)裁判にかけるか、さもなくば釈放するという国際法上の義務を米国に思い起こさせてほしい」と訴える。その上で、訴追されておらず、内戦状態にあるイエメン出身のハリド・カッシム収容者(42)の名を挙げ「彼のように本国には戻れない収容者の定住受け入れを、日本が申し出てくれることを望みたい」と語った。

 

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