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【国際】

<代償 中東平和の行方>西岸併合(下) アパルトヘイト道路 開通

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸で、開通した「アパルトヘイト道路」を見下ろすハーニ・イサウィさん。壁の手前側はイスラエル人しか通行できない

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 「入植者は誰一人として追い出さない。パレスチナに主権は渡さない」。イスラエルのネタニヤフ首相は四月の総選挙のさなか、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地を併合する考えを述べた。有権者向けのアピールだったが、ただの選挙目当てとは言い切れない動きが、目に見える形で進んでいる。

 パレスチナが将来の独立国家の首都と位置付ける東エルサレムに隣接する地域で、ハーニ・イサウィさん(66)が「元々はパレスチナ人の土地だったのに」と真新しい道路を見下ろした。今年一月に部分開通した国道4730号は通称「アパルトヘイト(人種隔離)道路」と呼ばれる。

 高さ八メートルの壁で区切られた道路の片方はイスラエル人専用。ヨルダン川西岸の入植地とエルサレムを結び、混雑緩和に役立つとされる。一方のパレスチナ側の道路は途中から迂回(うかい)し、エルサレムには直接入れない構造だ。地理学者ハリル・ツファクジ氏によると、イスラエル人とパレスチナ人という人種で隔てた道路は初めて。道路建設のために約一平方キロのパレスチナ人の土地が接収された。

 イサウィさんがアパルトヘイト道路に危機感を強める理由は「E1地区」に接するからだ。東エルサレムとヨルダン川西岸の大規模入植地マーレアドミムの間に位置する広大な丘陵地。入植地が建設されれば、東エルサレムは西岸と切り離され、西岸内も南北に分断される。

 さらにE1地区を含む入植地が併合されれば、パレスチナ国家樹立を目指す「二国家共存」案は事実上破綻する。そのため歴代米政権はE1開発に反対し、ネタニヤフ氏も計画を凍結してきた。だが、エルサレムの首都認定に続き、占領地ゴラン高原の主権を承認するなど、ことごとくイスラエルに肩入れするトランプ米政権。イサウィさんは「イスラエルの横暴を許す青信号を出している。E1建設と西岸の併合を認めるのが、米国の次の一手ではないか」と疑う。

 実際、トランプ政権の発足を追い風に、イスラエルはヨルダン川西岸で国際法違反である入植活動を強化。地元民間団体「ピースナウ」によると、二〇一七年の建設計画戸数六千七百四十二戸は、オバマ政権最後の一六年と比べて三倍に急増した。東エルサレムを含めた入植地は虫食い状態で増殖し、二百六十カ所に六十万人超が住み、既成事実化が進む。

 ネタニヤフ氏は総選挙に勝利し、五期目の続投が決まった。親イスラエルを鮮明にするトランプ大統領の娘婿で、中東問題を担当するクシュナー大統領上級顧問はユダヤ教徒で、幼少時からネタニヤフ氏と親しい。両親は過去に入植活動の支援団体に二万ドル(二百二十万円)を寄付。フリードマン駐イスラエル米大使も熱心な入植支持者だ。その二人を中心に策定するトランプ政権独自の中東和平案の公表が、六月に迫っている。 (ヨルダン川西岸で、奥田哲平、写真も)

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