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【国際】

火災から1カ月 ノートルダム修復、多難 進まぬ被害調査、再建時期も未定

13日、パリでノートルダム寺院を背に写真撮影する観光客ら=共同

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 【パリ=竹田佳彦】ゴシック建築の代表作、フランス・パリのノートルダム寺院(大聖堂)で大規模火災が起きてから十五日で一カ月を迎えた。仏政府は五年間での再建を目指すが、まだ被害実態の調査も済んでいないなど前途は多難だ。

 火災では尖塔(せんとう)や木造の屋根が燃え落ち、石造の壁も熱と消火時の放水で強度が落ちた。現在は上部に雨よけのシートがかけられ、内部には天井の崩壊を防ぐ梁(はり)が巡らされたほか、ステンドグラスの一部は取り外された。

 再建時期について、マクロン大統領は二〇二四年までにと宣言したものの、リーステール仏文化相が「再建費用の算出も時期尚早だ」と言及するなど具体的なめどは立っていない。費用にあてる寄付金は、仏メディアによると既に八億八千四百万ユーロ(約千八十五億円)が集まり、公式寄付窓口の一つ、文化遺産財団は受け付けを停止した。

 仏政府は四月下旬、政府の判断で都市計画や環境保護、文化財保護等の関連法の一部を適用除外できる法案を閣議決定した。早期修復できるよう、許認可手続きを大幅緩和するのが狙いだが、野党は「なぜ適用除外なのか。不要な条文なら法改正をすべきだ」と批判。調査会社ODOXAが今月九日に発表した世論調査でも国民の72%が例外措置に反対を表明、慎重な議論を求める声は強い。

 屋根や尖塔に使われていた鉛板が溶け落ち、粉じんが一帯に飛散したことへの懸念もある。公衆衛生当局は周辺の土壌から基準値の最大六十七倍にあたる鉛を検出。「恒常的に吸い込まなければ健康被害はない」と不安払拭(ふっしょく)に躍起だが、環境団体は「重大な健康被害を引き起こす恐れがある」と警告する。鉛中毒の患者団体も、汚染の実態調査や濃度の分布図作成を求めた。

 仏政府は尖塔の再建の有無を含めて屋根部分のデザインを公募すると表明している。尖塔はもともと十三世紀に建設されたが、強風で倒壊する恐れから十八世紀に取り外され、今回の火災で焼失したものは十九世紀に設置された。

 仏メディアは建築家らの提案を紹介しており、ガラス張りの屋根裏を温室にする案や、屋根すべてをステンドグラスにする案に関心が集まる。セーヌ川沿いで寺院をスケッチしていた建築科の学生ソフィア・ルバンステインさん(18)は「時代とともに修復を重ねた姿こそ、ノートルダムの歴史であり価値だと思う」と述べ、必ずしも焼失前の姿にする必要はないとの考えを示した。

 

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