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【国際】

アフリカ密猟深刻 象牙・サイの角 アジア富裕層需要

立派な象牙を持つアフリカゾウ

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 アフリカで象牙やサイの角を狙った密猟が深刻だ。ワシントン条約で国際取引は禁じられているが、アジアの富裕層の間では富の象徴として需要が高く、闇市場で高値で売買される。その結果、アフリカの貧困層が密猟に手を染め、命を落とすケースもある。密猟防止には消費者側の意識改革が不可欠。一方で、現地の生活支援のため、一定の管理下で猟と取引の解禁を求める声も上がっている。 (ロンドン、沢田千秋)

 今年四月、南アフリカのクルーガー国立公園で、サイを密猟しようと侵入した地元の男性がゾウに踏まれて死亡。遺体はライオンの群れに食われ、頭蓋骨とズボンしか残らなかった。「公園での密猟は増えており、予断を許さない状況で、軍や警察も警備を強化している」と、同公園の報道担当アイザック・ファーラ氏は話す。

 アフリカでゾウの生息数が最多のボツワナでは、ゾウを保護するNGO「国境なきゾウたち(EWB)」が昨年六〜八月、密猟で殺されたゾウの死骸九十四頭を確認した。

 その手口は残酷だ。十人前後が水辺でキャンプをしながらゾウを待ち、大口径のライフルで頭か肺を一発撃って倒す。息がある場合は脊椎をオノで切り、運動神経をまひさせて無抵抗にしてから、生きたまま頭部を切り取り、頭蓋骨についたキバの根元をオノで切断する。弾の節約と余分な発砲音で警備隊に気付かれないようにするためだ。

獲物を狙うライオンの群れ。野生動物の生息地に人間が徒歩で入るのは大きな危険を伴う=いずれも1月、ケニアで(沢田千秋撮影)

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 ボツワナ政府は一時、「密猟者は即銃殺」を断行した。一五年には隣国のナミビアやジンバブエ国籍の密猟者計五十二人が射殺されたことが発覚。国際問題になったため、即銃殺は中止した。

 危険を冒す密猟者が後を絶たないのは、法外な取引価格のためだ。英紙タイムズによると、今春、ナイジェリアから輸入された荷物から、中国・黄埔の税関当局が約七トンの象牙を発見し、摘発。五百万ポンド(約七億円)の価値があり、ゾウ千三百七十五頭分に相当した。南アとケニアが公式に発表するゾウの密猟数は年間百頭以下だが、押収量はそれをはるかに上回っていた。

 サイも希少な分、価格が高騰。南ア環境省によると、今年四月、香港国際空港で、南アからの荷物に入ったサイの角八十二キロが押収された。二百万ドル(約二億二千万円)相当という。

 密猟に警鐘を鳴らすNGO「トラフィック」(英ケンブリッジ)は「象牙は中国などで装飾品として、サイの角は中国やベトナムで長寿の薬と重宝され、富裕層が自らの富を誇示するために買う」と指摘する。

 だが、実際の効用はないようだ。英ニューカッスル大のニキ・ラスト研究員(環境科学)は「サイの角はケラチンという人間の爪や髪の毛と同じ物質。象牙も歯と同じで、薬効はない。しかし、アジア諸国の伝統的信仰と文化が根底にあり、富裕層の拡大に伴い需要も増えている」と話す。「アジアの消費者も密猟減少に意識を持つ必要がある」と訴える。

 一方で、ラスト氏はワシントン条約の解禁も検討課題に挙げる。「生態系に影響を与えないよう法的に管理された取引ができれば、密猟、密輸は減る。しかし、実際は西側諸国の動物保護団体の反対で議論は進んでいない」と指摘する。

 密猟者が死亡した南アのクルーガー国立公園は当時、「遺体をほとんど発見できず、父を失った娘の嘆きを見るのはつらい」と、密猟者に同情的なコメントも公表した。同公園のファーラ氏は「公園は国境地帯の貧困地域に囲まれている。密猟のため、住民がフェンスを越え、川を渡り、動物がいる中に徒歩で侵入している」と、危険を冒して密猟をする実情を話す。

 ファーラ氏は「南アには十分な頭数のゾウがおり、持続可能な管理ルールがある」と主張する。「取引が解禁されれば、動物たちに村や作物を荒らされる苦労を、ただ我慢してきた周辺の住民たちが、今度は動物から利益を得られるようになる」として、合法的な猟と取引の解禁を求めた。

 

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