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【国際】

EU、意思決定難しく 懐疑派「内側から変える」

次期欧州委員長が有力視されるウェーバー氏=27日、ロイター・共同

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 【パリ=竹田佳彦、ベルリン=近藤晶】欧州連合(EU)の欧州議会選挙は二十七日、これまで多数派としてけん引してきた親EUの二大会派が合計で初めて過半数に達しなかった一方、極右などのEU懐疑勢力が二〇一四年の前回選挙から議席を伸ばす見込みになった。欧州議会は合意形成が困難になるとみられ、機能不全に陥る懸念もある。一九九三年に発足したEUは、岐路に立っている。

◆トロイの木馬

 「イタリアの第一党が欧州を変える」。欧州の極右勢力をけん引するイタリアの与党「同盟」書記長、サルビーニ副首相は二十七日、国内第一党が判明すると自らのフェイスブックで強調した。「欧州を内側から変える」と打ち出して臨んだ選挙戦。フランスの極右「国民連合」のルペン党首とともに、以前はEU離脱を主張していた勢力だ。

 欧州メディアは、木製の馬の内部に兵士が潜んで敵の城内に入り、内側から攻め滅ぼした古代ギリシャの故事「トロイの木馬」に例える。

 方針転換の背景には、英国のEU離脱手続きの混迷がある。移民受け入れや厳しい財政規律を求めるEUへの有権者の不満に対し十分な受け皿になってこられなかった。「離脱は現実的ではなかった」。伊ミラノで欧州極右勢力の集会に参加した会社員マルゲリータ・グラッソさん(32)は伸長の背景をこう読み解く。

27日、イタリア・ミラノで記者会見するサルビーニ副首相=AP・共同

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◆3分の1

 欧州議会はEUの閣僚理事会とともに共同立法をする権限がある。議案は基本的に過半数の賛成で成立するが、欧州委員の選任や一部の外交手続きは、三分の一が反対すると修正や阻止ができる。

 今回の選挙で懐疑派勢力は二十七日午前現在、全体で三分の一に届かないとみられるが、ハンガリーのオルバン首相率いる「フィデス」のように、親EU勢力の内部に懐疑派が在籍しているケースもある。選挙後、大幅な会派再編が進む見通しで懐疑派が一定の影響力を握るのは確実だ。

 ただ、極右勢力の一部にはEU離脱派も存在し、ロシアとの距離感も親ロから反ロまで幅広い。一枚岩で連携できるかは未知数だ。

◆前途多難

 選挙では、二大会派の欧州人民党(EPP)と欧州社会・進歩連盟(S&D)が過半数割れながら、それぞれ第一党と第二党を維持した。しかし今後本格化するユンケル欧州委員長(十月末で任期満了)の後任選びでは、EPPがドイツ出身のウェーバー欧州議員を筆頭候補に推す一方、S&Dは別の候補を推し、難航が予想される。

 欧州委員長の議会承認には過半数が必要で、二大会派以外に親EU派の支持が不可欠。第三会派の中道リベラル会派に参加するフランスのマクロン大統領の「共和国前進」が「キングメーカー」になるとの見方もある。

 加えて、選挙では環境保護を訴える「緑の党」が躍進した。極右等の台頭とあわせて、欧州議会の多極化が進む。パリ政治学院のオリビエ・ロザンベルグ教授は「多数派の形成に時間がかかり、ますます意思決定が困難になるだろう」と指摘した。

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