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【国際】

欧州極右にロシアの影 オーストリア連立政権崩壊で露呈

 【ベルリン=近藤晶】世界最年少で首相に就任したオーストリアのセバスチャン・クルツ氏(32)が先月末、わずか一年半余りで退陣に追い込まれた。引き金は連立を組んでいた極右政党トップの便宜供与疑惑。欧州で極右政党が台頭する中、専門家はロシアと深いつながりを持つ極右との連立が欧州連合(EU)の分断を招く恐れがあるとして、危うさを指摘する。

 「すべての公共工事を手に入れられる」。オーストリアの総選挙を三カ月後に控えた二〇一七年七月、スペインのリゾート地イビサ島。極右、自由党の党首だったシュトラッヘ氏は、ロシア新興財閥(オリガルヒ)のめいを名乗る女性に選挙支援の見返りを約束し、協力を持ち掛けた。

 この隠し撮り映像を入手したドイツのメディアが五月十七日に疑惑を報道。シュトラッヘ氏は翌日、副首相と党首を辞任した。自由党と連立を組んでいた中道右派、国民党のクルツ首相は連立を解消。反発した自由党が全閣僚を引き揚げたため政局が混乱し、二十七日にクルツ内閣の不信任案が可決された。

 誰が何の目的で映像を撮影したのか真相は明らかになっていないが、シュトラッヘ氏の親ロシア姿勢は顕著だった。〇五年に党首となったシュトラッヘ氏は一六年、プーチン大統領の与党「統一ロシア」との連携協定に署名。一七年十二月の連立政権発足時には「欧州とロシアの関係改善に仲介役として力を尽くしたい」と述べていた。

 五月末の欧州議会で躍進し、自由党などと同一会派を組むイタリアの極右「同盟」も一七年に統一ロシアと連携協定を締結。連立政権で副首相を務めるサルビーニ書記長はプーチン氏に心酔し、ロシアが併合したウクライナのクリミア半島を訪問したこともある。

 フランスの極右「国民連合」のルペン党首は一七年の仏大統領選直前にモスクワでプーチン氏と会談。国民連合は過去にチェコのロシア系銀行から九百万ユーロ(約十一億円)の融資を受けたとも報道された。

 親ロの欧州極右に共通するのはプーチン氏を支持し、EUによる対ロ制裁の解除に前向きな点だ。極右に接近するロシア側にも欧州の分断を図り、「制裁包囲網」を打ち破る思惑があるとみられている。

 オーストリアの極右連立は欧州各国から警戒感を持って注視されていた。ドイツの政治学者、アルブレヒト・フォンルッケ氏は「極右政党の反民主主義的な姿勢が明らかになった。プーチン氏とつながる極右は欧州にとって危険だ。彼らはEUを弱体化させ、統合を阻止しようとしている」と警鐘を鳴らす。

<オーストリア自由党> 旧ナチス党の残党も加わる形で、1956年に設立された極右政党。欧州難民危機後の2017年に行われた国民議会(下院)選挙で「オーストリア第一」や「反難民」を訴え、第3党に躍進。クルツ氏率いる国民党との連立政権が発足した。

 

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