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【国際】

トランプ大統領、さび付く求心力 活況戻らぬラストベルト

GMが3月に操業を中止したローズタウン工場

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 2016年の米大統領選でトランプ氏初当選の原動力となった中西部のラストベルト(さび付いた工業地帯)。重厚長大産業の復興を訴えて労働者らの心をつかんだトランプ氏だが、衰退に歯止めがかからず失望が広がっている地域もある。1年半後の大統領選を左右しうる“トランプ離れ”の現場を訪ねた。 (米オハイオ州ローズタウン村で、赤川肇、写真も)

 「GMの工場を守れ」。雑草が覆う土手に立つ看板。そこから片側二車線の道路を数百メートル走ると、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)が一九六六年に開業したローズタウン工場がある。近年は小型セダン「シボレー・クルーズ」の組み立て拠点だったが、販売不振から段階的に生産を縮小し、今年三月に閉鎖。三年前まで、村の人口より多い四千五百人が働いていたという。

単身赴任先から帰省し、娘を抱くトミー・ウォリコーさん。トランプ大統領に託した希望は失望に変わった

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 トミー・ウォリコーさん(36)もその一人。一七年に一時解雇され、四百キロ離れたミシガン州のGM工場への転籍を受け入れた。ローズタウン工場から三キロの自宅に家族を残しての単身赴任生活。「何週間も娘たちに会えないのがつらい。最悪だ」。帰省時に応じた取材中、抱っこをせがむ三女アナベラちゃん(1つ)を持ち上げ、目を潤ませた。

 単身赴任を選んだきっかけは一七年七月、母親について初めて参加した政治集会。〇九年までの十年間で四十万の製造業雇用が失われたオハイオ州で「引っ越すな。家を売るな。失われた仕事は全て戻ってくる」と訴えたのが、就任半年後のトランプ氏だった。当時一時解雇されたばかりだったウォリコーさんは自宅の売却を考えていたが、その言葉を信じることにした。「大統領が僕に語り掛けているように感じたから」

 村のあるトランブル郡は従来、大統領選で民主党候補の圧勝続きだったが、一六年は共和党のトランプ氏が民主党のヒラリー・クリントン元国務長官に競り勝った。ヒル村長(共和党)に勝因を尋ねると「希望だ」と即答した。働き口がなくなり地域が廃れる中、古き良き時代の復活を約束したトランプ氏に有権者がいちるの望みを託した、と。

 米経済そのものはトランプ政権下で景気拡大が過去最長に迫る。労働市場も堅調だ。ただ、ラストベルト復活の鍵を握る製造業は様相が異なっている。

 直近の雇用統計によると、オハイオ州の製造業の就業者数は七十万人。トランプ氏が就任した一七年一月から2%増えたが、一九九〇年より35%少ない。自動車製造業に限れば九〇年の約半分で、トランプ氏就任時とほぼ変わらない。「仕事が戻ってくるどころか、失われている。まるで反対だ」とウォリコーさん。トランブル郡の失業率(四月)は6・6%と全米平均を2・7ポイント上回る。

 トランプ氏は再選に向け、ラストベルトのてこ入れに躍起だ。GMのローズタウン工場閉鎖に対して「ハッピーではない」と不快感を示していたトランプ氏。五月八日には、GMがローズタウン工場を電動トラックメーカーに売ることになったと、突然ツイッターに投稿した。「オハイオ州にとって素晴らしいニュースだ!」と自賛。これを受けてGMも「協議中」と認めたが、具体的な時期や条件は不明だ。

 しかしウォリコーさんにとっては、希望が失望に変わった。「GM従業員としてローズタウンに戻る道はほぼ絶たれた」。自宅を手放し、家族でミシガン州に移り住むことに決めたという。

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