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【国際】

「平和の道」に南北分断の影 朝鮮半島非武装地帯ツアー人気

平和の道のスタート地点でガイドの説明を聞く参加者ら。張り巡らされた鉄条網が目を引く

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 韓国北東部、江原道(カンウォンド)の高城(コソン)で、南北の非武装地帯(DMZ)周辺を散策するツアーが韓国の一般市民を対象に4月から開かれている。6月30日にトランプ米大統領が板門店(パンムンジョム)を電撃訪問し、注目が集まるDMZ一帯。外国人の参加は受け付けていないが、同月中旬に外国メディアに公開され、韓国人観光客とともに歩いてみた。 (高城で、中村彰宏、写真も)

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 スタート地点の統一展望台から日本海を眺める。青い海と砂浜のコントラスト、吹き抜ける風と波の音が心地よい。北の方角に目をやれば北朝鮮が見渡せる。「平和の道」と名付けられた散策路は海岸沿いを北に向かう二・七キロ。海側はフェンスで遮られ、張り巡らされた鉄条網が物々しい印象を与える。

 ツアーは、南北の軍事的緊張緩和を目指して結んだ昨年九月の軍事合意に基づき、昨年に板門店で開かれた南北首脳会談から一周年となる四月二十七日に始まった。南北分断以後、民間人の立ち入りが制限されてきたDMZ周辺が一般に開放されるのは初めて。「たくさんの人をDMZに案内し、いつも感動を味わっている」とガイドを務めるパク・チョンヘさん。月曜日を除いて一日二回実施され、毎回申し込みが定員を超える人気という。

 写真撮影できる場所は制限され、付き添いの韓国軍の軍人からはフェンスに書かれている番号は写らないように撮影するよう指示を受けた。理由を尋ねると「保安情報が北に伝わってしまうのを防ぐため」と言う。朝鮮戦争(一九五〇〜五三年)はあくまで休戦状態。戦争はまだ終わっていないことを実感する。

 散策路を歩き始めるとすぐに南北を結ぶ鉄道の線路が見えてきた。列車の運行は二〇〇八年以降、途絶えている。昨年四月の南北首脳会談で板門店宣言に南北の鉄道事業推進も盛り込まれ、着工式も開かれたが、米朝関係の停滞で進んでいないのが現状だ。

 散策路の西側には、地雷への注意を呼びかける旗が並ぶ。DMZには朝鮮戦争時の地雷が埋まったまま。その数は数千とも数万とも言われる。散策路の途中、横倒しになった重機に出くわした。〇三年に電柱を建てる作業中、地雷を踏んで吹き飛び、地雷の恐ろしさを伝えるためにそのまま残されているという。

地雷を踏んで横倒しになった重機

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 DMZ周辺は、絶滅危惧種を含む動植物が生息する「自然の宝庫」。地雷が埋まっていることもあって人の手が入っていないという皮肉な理由だが、初夏を迎え、辺り一面に木々や草花が青々と生い茂っていた。散策中もシカに似た動物が姿を見せ、こちらに気づくと森の中へと消えていった。

 さらに歩いて行くと、色とりどりのプレートをつるした造形物が見えてきた。プレートにはツアー参加者の願い事が書いてあり、「私たちの願いは統一」「一日も早く一つになろう」などと記したものも。

 スタートから一時間ほどで散策路の終点に着き、ツアーの最終目的地、金剛山(クムガンサン)展望台には車で向かった。もともとは韓国軍の観測施設で、目の前に北朝鮮が望める。今年二月にも展望台を訪れたが、当時は見えた北朝鮮の監視所がなくなっていた。軍事合意に基づき、南北がそれぞれDMZ内の監視所を撤去したからだ。そのため、以前は制限されていた写真撮影も自由にできた。

 展望台からは金剛山の雄大な景色も堪能できた。「分断されていると思うと胸は痛むが、少しずつ前進しているのを感じる。南北関係がさらに良くなって、いつか金剛山にも行ってみたい」。夫とツアーに参加したイ・ヒョンミさん(51)の願いは、いつかなうのだろうか。

金剛山展望台から眺める北朝鮮の景色

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