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【国際】

国境・遼寧省丹東市ルポ 国連経済制裁の隙間 中朝間新商売も登場

中国・遼寧省丹東市で6月26日、中朝友誼橋を通って新義州へ向かう北朝鮮の旅行会社の名が記されたバス。中国人旅行客を乗せているとみられる

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 中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席が北朝鮮を初訪問した直後の六月下旬、中朝国境の中国遼寧省丹東市を訪ねた。友好ムードを背景に、北朝鮮旅行客は増加。だが、国連制裁が緩和される見通しが立たぬ中、中朝間の商取引に携わってきた業者の中には、新手の商売を模索する動きも出てきた。 (丹東市で、城内康伸、写真も)

 習氏訪朝から六日たった六月二十六日朝。国境に架かる中朝友誼(ゆうぎ)橋を、北朝鮮側の都市・新義州(シンウィジュ)へと向かうバスが、断続的に通過した。日帰りツアーに参加した中国人が乗客だ。

 制裁対象外の観光は北朝鮮にとって、重要な外貨獲得の手段だ。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が昨年三月に初訪中してから活発化し、中国政府も奨励する。中国メディアによると、北朝鮮当局は今春、入国する旅行客数を一日当たり千人に限定する措置に出た。宿泊施設の収容能力が追いつかないのが理由とされる。中国の旅行会社によると、平壌行き列車の切符は出発一カ月前に予約しないと、購入は難しい。

 中国税関の貿易統計によると、中国の五月の対北朝鮮輸出額は約二億五千八百万ドルで、制裁強化が進んでいた二〇一七年十一月以降で最高を記録。制裁対象外取引は拡大する傾向だ。

 「朝中両国が呼吸を合わせれば、うまくいく」と朝鮮労働党傘下の総合商社に所属し、丹東に派遣された男性は中朝の結束強化に期待を寄せる。北朝鮮技術者を送り込む中国の合弁相手を探しに来た。中朝首脳は六月二十日、多様な分野で交流を深めていくことで合意した。

 だが、北京の外交筋によると、中国当局はいまのところ、制裁が緩和されない限り、制裁を履行する姿勢は崩さないでいる。北朝鮮が今年一月から五月までに中国に輸出した総額は前年同期比0・1ポイント増と輸入に比べ鈍い伸び。北朝鮮の外貨不足は深刻だ。

 「何だか分かるか」。制裁で輸出が禁じられた物品を長らく扱ってきた中国の貿易業者が、ペットボトルに入った茶色の液体を指さした。メチルアルコールで製造した疑似ガソリンだという。

 輸出が制限された石油精製品が北朝鮮国内で不足する状況に便乗し、北朝鮮側の国境地域で販路を開拓する考え。「平壌でのガソリン価格は一キロ当たり七人民元(約百十円)。疑似ガソリンの原料単価は約二・五元。完成品を船で新義州に運んで五元で売る」

北朝鮮の国境都市・新義州で、地元の労働者に付けまつげの作り方を実践指導する中国人女性=関係者提供の動画から

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 別の中国人業者は動画を見せた。中国の女性が新義州で、地元の人に付けまつげの作り方を教えている内容。整然と並んだ長さ約二センチの人毛にハケで凝固剤を塗り、ガラスの棒で丸めていく。北朝鮮側には人件費を支払い、完成品は中国で売りさばくそうだ。

 「氷毒(ピンドゥ)」と呼ばれる北朝鮮産の覚醒剤が中国で密売される不穏な動きも確認した。「まだまだ、小口の取引だが」。北朝鮮の密売人と接触している中国人の男性が声を潜めた。「一グラム当たり百五十元。平壌における末端価格の半額で流通させている」と説明した。

 北朝鮮産覚醒剤の密輸は中国公安当局が一一年、北朝鮮側に厳重に抗議したことで激減したとされる。中国では、麻薬関連の犯罪は摘発されれば、死刑につながる。しかし、男性はつぶやいた。「制裁の影響で中朝の取引が狭まった。ジリ貧の業者は、背に腹は代えられない」

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