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【国際】

イラン、濃縮超過に着手 履行停止第2弾 米との対立さらに

 【テヘラン=奥田哲平】イラン原子力庁は七日、二〇一五年の核合意で定められたウラン濃縮度の上限を超過する作業を再開すると発表した。同日中に超過する見通し。トランプ米政権の経済制裁に対抗する核合意の一部履行停止の第二弾で、核兵器につながりかねない高濃縮ウラン製造に道を開いた形。完全な核廃棄を求めるトランプ米政権の強い反発は避けられず、両国の対立は一段と緊迫しそうだ。

 イランが合意に違反したと判断されれば、国連制裁が復活する可能性があり、国際社会から孤立する恐れがある。ロウハニ大統領とマクロン仏大統領が六日に電話協議し、全ての合意当事国による対話再開に向けた条件を十五日までに探ることで合意した。

 核合意ではウラン濃縮度は3・67%以下と制限。イラン南部ブシェール原発に必要な核燃料レベルまで濃縮度を引き上げるとして当面は5%前後にとどめる見通し。核爆弾に転用可能な90%の高濃縮ウラン獲得まではなお時間がかかる。

 アラグチ外務次官は七日の会見で「欧州は要求を満たさなかったからだ」と正当化。今後六十日ごとに段階的な履行停止を続けると述べた。遠心分離機の保有規制などを念頭に置いているとみられる。イランは五月、核合意の履行義務の一部停止を表明。第一弾として一日に低濃縮ウラン貯蔵量上限(三百キロ)を超過。合意当事国の英独仏に対し、石油輸出と銀行分野で取引継続につながる具体的な経済支援策がまとまらなければ、七日に濃縮度規制を破ると警告していた。

◆濃縮度5%で「寸止め」

 イランがウラン濃縮度の上限である3・67%を超過すると表明したのは、核合意崩壊を防ぎたい英独仏など当事国に対して、核兵器開発に段階的に近づく構えを示す「瀬戸際外交」に転じたことを意味する。核合意の規制を破るものの、超過幅は5%前後に抑制することで、国際社会からの強硬措置をぎりぎりの線で回避しようとの狙いだろう。

 核兵器に転用可能なウランは濃縮度90%が必要だ。イランはこれまで、核合意以前に保有していたのと同じ20%に高める選択肢をちらつかせてきた。濃縮度が20%に達すれば、90%までの作業の大半が完了するとされる。核爆弾製造までの時間が一気に短縮されれば、核合意の根幹は失われることになる。

 イランの本音は核合意存続による経済的利益の確保だ。二〇一五年の核合意に至る協議で、イランはウラン濃縮度を上げて遠心分離機を増設して欧米の危機感をあおり、最終的には譲歩して経済制裁の解除を手にしたことは記憶に新しい。

 最高指導者ハメネイ師が六月、安倍晋三首相との会談で核兵器を製造、保有する意思がないと明言した事実は重い。その意味でイランの意図を読み誤り、非難の応酬で軽率に緊張を高めるべきではない。イランによる米軍無人偵察機の撃墜などでホルムズ海峡周辺は一触即発の危機にある。米軍最高司令官でもあるトランプ米大統領には安易に軍事行動に踏み切りかねない危うさもつきまとう。

 濃縮度5%で「寸止め」したイランだが、その先の展望は見えないのが実情。圧力一辺倒の米国も出口戦略を描けていない。日本を含めた国際社会は事態打開に向けた仲裁を本格化する必要がある。 (奥田哲平)

<イラン核合意> 2002年に秘密裏の核開発計画が発覚したイランと、核兵器保有阻止を目指す米英仏中ロ(国連安全保障理事会の常任理事国)にドイツを加えた6カ国が、15年7月に結んだ合意。イランが核開発を大幅に制限する見返りに、欧米などが制裁を解除し、イランは原油輸出などが可能になった。トランプ米政権は昨年5月に核合意離脱を表明し、その後、制裁を全面復活。イランは今年5月に合意の一部履行停止を表明。今月1日には低濃縮ウランの貯蔵量が合意の上限を超えたと発表した。 (共同)

 

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