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【国際】

ホルムズ海峡 イラン港湾都市ルポ 緊迫の港、戦火望まぬ市民

9日、イラン南部バンダルアバスの海水浴場の沖合で、積み荷のないタンカーなどが多数停泊していた

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 世界の原油輸送の大動脈、ホルムズ海峡周辺の海域で、米国とイランの神経戦が緊迫の度を増している。十日も、イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」が英タンカーの航路を妨害したとされる新たな事案が発生。海峡に面するイラン南部の港湾都市バンダルアバスを訪ねると、米経済制裁の影響で貿易取引や観光客が減る中、市民は「戦争は誰の利益にもならない」と祈るように口にした。 (バンダルアバスで、奥田哲平、写真も)

 首都テヘランから南へ約千キロ。ホルムズ海峡を望む街は、気温四〇度近い熱風が湿気を伴って体にまとわり付く。

 バンダルアバスはイラン有数の貿易港を抱える一方、同国海軍と革命防衛隊が一大拠点を構える国防の最前線でもある。沖合に積み荷のないタンカーが多数、停泊。その対岸には、親米アラブ諸国を拠点とする米艦船が展開し、にらみをきかせる。

コンテナが積まれた貿易港は、出入りが厳しく規制されていた

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 街は一見、平穏だ。しかし、機密施設の軍港はもちろん、貿易港も立ち入りが認められなかった。行政機関や海運業者も一様に取材拒否。現地在住のイラン海軍元高官は、五月に米軍が原子力空母を派遣して以降「(イラン南西部)ブシェールなど各地から部隊が増強された」と語り、有事に備えた現場の緊張の高まりがうかがえた。

 イランが二〇一七年に作成した資料によると、革命防衛隊は「毎日百隻以上の船が、ペルシャ湾でパトロールを実施している。米国がどこを見ても、われわれの船がいる」と誇示。これまでもホルムズ海峡の封鎖をちらつかせ、米艦船への急接近といった挑発行為を繰り返してきた。

 周辺海域では、米国が軍事的圧力を強化した五月以降、タンカーなどの民間商船が攻撃を受ける事件が相次ぐ。米国はイランの関与を主張するが、イランは否定。攻撃主体が不明なまま、米国は航行の安全確保を目的とする多国籍の有志連合結成を検討する。イランには、ペルシャ湾の洋上で石油を別の船に積み替える「瀬取り」の疑いも指摘されている。

バザールで、地元特有の仮面を着けて買い物する女性ら=いずれも9日

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 テヘラン商工鉱業農業会議所理事で運輸会社を営むファテメ・モヒミ氏によると、イランにとっての海上交易の相手先も、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイからオマーンに移りつつある。UAEが米国支持のため「何を貿易するのか知られないため」だという。

 バンダルアバスでは、米国との武力衝突に現実味を感じる市民は多くはないが、海峡通過のリスクの高まりや米制裁によって、貿易拠点の街の経済への影響も。海運会社で働く男性(41)は「制裁を受けて輸出入が減っている上、戦争保険の値上がりの影響で受注が減っている」。米CNBCテレビによると、船舶への保険料は過去二カ月で十倍に跳ね上がった。

 数年前まで民間輸送船の乗組員だったムハンマドさん(58)は「海峡は、周辺国と連絡を取り合って安全に航行できていた。いま危機を高めているのは米艦船だ」と指摘。冬場は避寒地として人気だが、観光客も減っている。「戦争は誰も得をしない」と事態の収束を望んだ。

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