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【国際】

軍拡 ひた走る中国 国防白書「領土統一は未完成」

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 中国政府が4年ぶりに国防白書を発表した。白書は中国の軍拡に対する懸念の払拭(ふっしょく)に努める一方、米国への対抗心とともに、台湾独立を目指す動きには武力行使にも言及。海洋、宇宙、サイバー(電脳)などに活動空間を広げつつ「世界一流の軍隊」建設にひた走る人民解放軍は、周辺国にとって脅威に映るのは必至だ。 (北京・中沢穣)

 約四年ぶりの白書は二万七千字に及び、習近平(しゅうきんぺい)政権下では初めての「総合型国防白書」(国防省)と位置づけた。各国との国防費の比較をグラフ付きで掲載し、「国連安全保障理事会常任理事国では最も少ない」「人口一人当たりの国防支出では米国の5%」などとデータを提示し、「中国の国防費は総じて公開性、透明性があり、支出の水準は適正だ」と自賛した。

 一方で白書は「経済の発展に合わせて国防費の増加を継続させる」とも記述し、今世紀半ばまでに「世界一流の軍隊」を建設するという目標も掲げる。

 白書発表に合わせた記者会見で、人民解放軍の王太国(おうたいごく)大佐は国防費が拡大を続ける理由を問われ、「中国は領土の完全な統一を実現していない世界で唯一の大国だ。世界で安保情勢が最も複雑な国の一つでもある」と正当化した。台湾や南シナ海のほか、中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島などを念頭にした発言とみられる。中国との領土問題を抱える周辺国や台湾に、軍事的圧力を緩めない姿勢を見せたといえる。

 実際、白書では台湾で独立を目指す動きや、米国を念頭にした「外部勢力」の干渉を繰り返しけん制。国防省の呉謙(ごけん)報道官も会見で「もし誰かが台湾を中国から分裂させようともくろむのなら、中国軍は一戦を惜しまない」と強調した。

 さらに白書は単独主義を強める米国に対し「軍事費を増大させ、世界の安定に損害を与えている」「アジア太平洋への干渉を強め、地域の戦略的均衡を壊している」と批判を展開した。

 また、サイバー(電脳)空間や宇宙も戦略上の重要分野と位置づけ、「ネット上での主権の維持や情報の安全性と社会の安定」を追求する姿勢を強調した。核戦略については核の先制不使用の原則を維持した。

 中国政府が二〇一五年十一月から進める軍改革を、白書は「構造的矛盾や政策上の問題の解決に力を入れ、強軍の歴史的歩みを踏み出した」と評価した。改革は習近平国家主席(中央軍事委員会主席)の主導で、陸軍重視から海軍重視への転換を図っており、白書でも遠海防衛型の海軍への脱却を加速させていると記した。

◆軍事力米に対抗

<茅原郁生(かやはら・いくお)拓殖大名誉教授の話> 今回の白書の内容は中国が二十一世紀中ごろまでに世界最大の国力を持ち、それを支える強い軍をつくるという、二〇一七年の共産党大会で示された国家目標に沿ったものだ。装備の近代化を進め、サイバー空間や宇宙など多様な領域で軍事力を強化し、新時代の戦争に勝てる軍を目指すとの強い意志を国内外に示した。

 また世界最強の米軍に対抗できる軍事力、台湾の占領が可能な軍事力を目指す意志もうかがえる。米国をけん制するとともに、自国の軍組織に対するメッセージとも言えるだろう。

 

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