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【国際】

モスクワ 残る核シェルター 見学者「備え必要」/若者は軍拡に疑問

冷戦時に使われたモスクワの核シェルター。キューバ危機の際、旧ソ連軍幹部会議が開かれた部屋も公開されている

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 米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約が二日に失効するなか、ロシアのプーチン政権は米国への対抗心をあおり、国民に軍備強化への理解を呼び掛けている。核戦争への緊張が高まった時代の遺構が残るモスクワの市民からは、核戦争の脅威への懸念とともに、欧米と対立するプーチン氏への不満も聞かれた。 (モスクワ・栗田晃、写真も)

 地下六十五メートル、ビルの十八階分に相当する階段を下ると、分厚いコンクリートと鋼鉄の壁に覆われた約七千平方メートルの空間が広がる。核攻撃を受けた際、反撃計画を練る軍司令部が置かれたモスクワ中心部の核シェルター「ブンケル42」だ。

 市内に七千以上あるとされる地下シェルターの一つで、スターリンの命令で一九五六年に完成。軍の二千四百人が一日四交代で秘密裏に働いた。二、三十人が座れる長机が置かれた部屋では米ソが核戦争目前まで迫った六二年のキューバ危機の際、幹部会議が連日開かれたという。

 INF条約の調印前年の八六年に閉鎖され、現在は「冷戦博物館」の名で一般公開される。目玉の見学ツアーでは、見学者が指令台の「核のボタン」を押すと、大陸間弾道ミサイル(ICBM)が発射。逃げ惑う人々、爆風で破壊される街の映像が流れ、「任務完了」。セルゲイ・カメンスキー館長(46)は「特定の相手国を想定しているわけではない。核兵器が大きな悲劇を招くと伝えるための演出だ」と強調した。

 しかし、架空の設定と受け流せない現実がある。プーチン大統領は、米国の脅威に対応するためと核兵器開発を正当化。二〇一四年三月のロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合以降、欧米との対立は深まり、軍事的威圧に頼る傾向は強まる。

 国民も「危機」の認識を共有しており、一四年六月の世論調査では、九〇年代に比べ核戦争の脅威が「高まった」と53%が回答した。シェルターの見学客に聞いても「核兵器がある限り、備えは必要だ」との意見が大勢。年金生活者のミハイル・スクウォルツォフさん(65)は「シェルターはソ連時代の『負の郷愁』だが、これからも残っていくのだろう」と予測した。

 ただ、冷戦時代を知らない若い世代にとっては、対立をあおる強権手法への不満がくすぶる。七月下旬、モスクワで行われた反政権デモには若者を中心に約二万人が参加。ドミトリーさん(33)、マリアさん(33)のカップルは、ロシア国民の七分の一に当たる約二千万人が貧困にあえぐ中、膨大な軍事費を投じることに疑問を呈した。「まずは少ない給料で最低限の生活を送っている人々を救うべきだ。軍備は余裕がある国のやることだ」

シェルターで展示された「核のボタン」を備えた指令台

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