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【国際】

インド、実効支配化狙う カシミール自治権を剥奪

 【ニューデリー=共同】毛織物カシミヤの産地、インド北部ジャム・カシミール州が揺れている。インドの州としては唯一イスラム教徒が多数派で、イスラム教が国教のパキスタンと領有権を争う地域を含み、大幅な自治が認められてきたが、インド政府がその権限剥奪を決めたからだ。実効支配の強化が狙いで、核保有国同士の緊張が懸念される。

 パキスタン政府は7日、対抗措置としてインドとの貿易を停止すると発表した。

 「カシミールが貧しいままでテロも終わらないのは、憲法三七〇条があるからだ」。与党インド人民党(BJP)総裁のシャー内相は五日、上院でこう述べ、防衛や外交以外の大幅な権限を州に認め、州外の住民の土地取得を制限する憲法規定の削除を訴えた。

 同州は十万平方キロ余りで北海道より少し広く、イスラム教徒が多数派のカシミール、ヒンズー教徒が多いジャム、仏教徒もいるラダックの三地方から成る。インドとパキスタンが分離独立した一九四七年、ヒンズー教徒の藩王が自治を認めるインドへの帰属を決めた。

 両国はカシミール地方などを巡り過去に三度の戦火を交えた。第三次印パ戦争後の七二年、暫定的に実効支配線を定めた協定が結ばれ、事実上の国境線に。大阪大大学院の山根聡教授(南アジア地域研究)は「カシミール問題は棚上げ状態で、両国は付かず離れずの関係を続けてきた」と話す。

 インド全体ではヒンズー教徒が約八割を占め、BJPはヒンズー教至上主義団体が母体。今年の下院選で自治権剥奪を公約の一つとし、前回に続いて単独過半数を得た。勢いを背景に約七十年前の憲法規定の削除に動き、改正案は上院を即日通過、下院も六日に可決した。

 BJPは自治規定により州の経済成長が阻害されていると訴えてきた。しかしヒンズー教徒を移住させて住民の宗派構成を変え、イスラム過激派の反政府活動を抑え込む思惑もあると指摘される。住民には自治権剥奪で「アイデンティティーを失う」との意識が強い。

 山根教授は「BJPは八月十五日の独立記念日の前に強気の路線を見せた。領土を巡るプライドはパキスタンにもあり、国際社会を巻き込んでインドへの対抗姿勢を強めるだろう」とみている。

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