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【国際】

<米国民として 日系人と戦争>(5)継承 過ち二度と 声上げる

移民の子どもの収容施設設置に反対する日系人ら。右端がウィリアムズさん=米南部オクラホマ州で(ゲッティ・共同)

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 六月二十二日、米南部オクラホマ州ロートンのフォート・シル陸軍基地。日系四世のオーラ・ニューリン(39)は約二百人の抗議デモの中に身を投じていた。参加者は約二万羽の千羽鶴を手にしていた。トランプ政権が、保護者を伴わない不法移民の子どもたち約千四百人を収容する施設を建設し、一時的に拘束する方針を打ち出したためだ。

 基地は一九四二年四月から五月にかけて日系移民(一世)約七百人を「敵性外国人」として一時的に収容した施設の跡地にある。デモには強制収容の経験がある日系二世らが「保護を求める無実の子どもたちに、私たちが受けたような不当な扱いを強いようとしている」と声を上げた。

 ニューリンの祖父は、日系二世で第二次世界大戦中、欧州戦線で激闘した二世の部隊「第四四二連隊」で戦った。「祖父は多くを語らなかったが、祖母がその世代では珍しく自らの経験を昔話のように書いてくれて、それを読んで育った」

 地元ワイオミング州の大学で人類学を教えるニューリンは「もともとデモに参加するような性格ではなかった」という。だが、中南米からの移民問題が深刻化する中、「祖父母ら家族の経験を学び、伝えるために声を上げる義務を感じるようになった」と語る。

 抗議の輪の中には、法衣をまとった僧侶の姿もあった。南カリフォルニア大教授(宗教学)のダンカン・ウィリアムズ(49)は曹洞宗の僧籍を持つ。戦時中、フォート・シルの施設に抑留された七百人のうち、九十人が僧侶だった。ウィリアムズは「収容期間中、四人が亡くなった。うち二人は監視兵に銃撃され、宗派を超えて弔った歴史がある。そういった歴史を繰り返さないよう祈った」と話す。

 抗議デモは七月二十日にも実施された。同二十六日、ホワイトハウスはオクラホマ州知事に建設計画の中止を伝えた。「子どもたちをここに押し込めることが正しいことなのか。われわれの行動が、人々に再考を促したと思う」。ウィリアムズはそう胸を張った。

 ニューリンは今、ハートマウンテン強制収容所跡の保全とその歴史を次世代に伝えるハートマウンテン・ワイオミング財団の理事も務める。デモ参加にあたっては財団理事長で日系三世のシャーリー・ヒグチ(60)も背中を押した。

 ヒグチの両親は同収容所で知り合った。母は生前、収容所跡の整備と博物館の建設に向けて、コツコツと寄付を重ねた。母が二〇〇五年に亡くなって以降、その遺志を継いだ。ヒグチは「第二次世界大戦時に日系人に起きたことと、今米国で起きていることのすべてが同じではないことは理解している。それでも、やはり類似点があることは否定できない」と述べつつ、こう訴えた。

 「米政府は日系人に謝罪した。それだけに過ちを二度と繰り返さないよう気を付けなければならないし、繰り返さないようにするためにも、私たちは行動していく」

  =敬称略、おわり

 (アメリカ総局・岩田仲弘)

ハートマウンテン博物館で、母シーラさん(左)と一緒に祖父の軍服を紹介しながら歴史を親族に語るニューリンさん(右から2人目)=岩田仲弘撮影

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