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【国際】

<最貧国に生きる ニジェールの現場から>(下)少女の尊厳取り戻した夢

ニジェール南部ザンデールで、震えながらレイプ被害を語った16歳のマリヤマ(仮名)。男性優位社会で沈黙を強いられたが、語ることが癒やしになると前を向く

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◆性被害支援「訴える権利知って」

 ひざの上で握り締めた手が震えている。深く荒くなる呼吸。下を向き、まばたきを繰り返す目は時折、白く反転する。西アフリカ・ニジェール南部の都市ザンデールで、十六歳のマリヤマ(仮名)が初めて、他人に過去を語り始めた。

 「あの時、私と私の尊厳が冒された」

 ザンデール州は国内最多の約四百五十万人が暮らすが、大企業は中国の石油精製会社のみ。職がない若者たちがパレと呼ばれるギャングを組織し、酒やドラッグに溺れ、暴力行為を繰り返してきた。

 マリヤマが四歳の時、両親は離婚。母と二人で、路上で揚げたコオロギなどを売っていた。「十一、二歳の時、少年が来て、私と寝たいと言った」。母が少年に注意したが、一人で路上にいたある朝、少年と仲間に襲われ、建設中の建物に連れ込まれた。

 「彼らはドラッグのようなものを吸っていた。四人にレイプされた。少年は『誰にも言うな。言えば、戻って来て、おまえを激しく蹴って殴る』と言った」

 せり上がるおえつを抑え、気丈にハウサ語を絞り出したが、通訳が始まった途端、はらはらと泣いた。

ザンデールで、性暴力や児童婚の被害者を支え、女性の権利向上を目指すサフィア・イブラヒム

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 彼女に「告白」を促したのは、地元の女性活動家サフィア・イブラヒム(34)だ。十六歳の時、姉が出産で死亡し、姉婿との結婚を強制された。性交を拒否し続けたが、母から「処女じゃないと疑われる」と諭され間もなく妊娠した。夫から逃げながら子供は死産。裁判で離婚を勝ち取った。

 ギャングレイプが最も横行していた二〇一二年ごろ、「路上でニワトリのように連れ去られる少女を見た」。監禁された少女を捜し出し、娘の被害を恥じる親の代わりに病院へ連れて行った。

 自らの経験を基に、一三年、国連児童基金(ユニセフ)の支援で、性被害を受けた少女たちにミシンを使った裁縫などの職業訓練をする団体を立ち上げた。無学のサフィアだが、宗教指導者や族長に掛け合い、ギャング撲滅にも尽力している。

 男性が圧倒的に優位なこの国で、サフィアは女性の権利向上をうたう先駆者だ。「性暴力を泣き寝入りする少女がたくさんいる。警察や法律に訴える権利があることを知ってほしい」

 沈黙を強いられてきたマリヤマは昨年、サフィアと出会い、被害を打ち明けた。「もっと早く出会いたかった。当時、太ももに血がつたう私の姿を人々は隠した。もし彼女がいたら、すぐに助けを求め、人としての権利を取り戻そうとした」

 サフィアの話をすると、マリヤマの目に力が満ちてきた。笑顔は美しかった。

 「学校に行きたい。卒業するまで絶対に結婚しない。勉強して人を助ける組織を運営する。私をレイプした少年はもう私の中にはいない。私は夢に向かって進んでいるから」 =敬称略

 (ザンデールで、沢田千秋、写真も)

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