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【国際】

<聞き事>米日系人の抑留、いま語り継ぐ 日系3世で運営財団理事長 シャーリー・ヒグチさん

今後の抱負を語るシャーリー・ヒグチさん

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 トランプ米政権が排外主義的な移民政策を打ち出す中、第二次大戦時に人種差別により強制収容された日系人とその子孫が「歴史を繰り返すな」と声を上げている。日系三世の弁護士で、ワイオミング州ハートマウンテン強制収容所跡の博物館を運営する財団理事長のシャーリー・ヒグチさん(60)に聞いた。 (米西部ワイオミング州パーク郡で、岩田仲弘、写真も)

 −まず、家族について。

 「祖父は十八歳の時、日本からカリフォルニア州にやって来た。農業を営み、その後サンノゼに約五万八〇〇〇平方メートルの土地を手に入れた。当時一世に市民権はなく、土地も所有できなかったため、息子の名義にしたそうだ」

 −一九四二年二月に大統領令が出て、家族はハートマウンテンの収容所に抑留されることになった。

 「日系人に対する破壊行為などが横行していたため、祖父は広大な土地をわずかな額で近所に売り渡すほかなかった。父は当時十一歳。母とは収容所で知り合った」

 −抑留者は当時のつらい経験をなかなか声に出さなかったと聞く。

 「父は大学教授で、製薬会社を立ち上げるなど、家族のために仕事一筋でほとんどしゃべらなかった。仏教徒でもあり、抑留を人生の経験の一部として受け止めていたと思う」

 「母も、二〇〇五年にがんで亡くなった後、初めて、ハートマウンテンの博物館建設に向けて多額の資金を匿名で寄付していたことを知った」

 −一一年に博物館の開館にこぎ着けた。

 「ハートマウンテンは、政府の手ではなく、元収容者らの寄付で運営し、米政府から独立していることに意義がある。戦時中、日系人は、政府が運営する収容所に隔離された。そうした歴史があるからこそ、これからも政府のルールや規制に縛られない運営によって、内容を充実させていきたい」

 −トランプ政権の移民政策に強い危機感を持っているようだが。

 「最大の問題は、政府と契約して不法移民を収容する民間の刑事施設が、ビジネスとして成り立っていることだ。運営会社は、移民を長く収容すればそれだけ富を得られる。特に収容された子どもが受ける心理的なダメージは計り知れない」

 「大統領は国家非常事態だからといって、国境の壁を建設しようとしたり、不法移民を拘束しようとしたりしている。まさに日系人は戦時中、非常事態として大統領令一つで強制収容された。こうしたことを繰り返さないためにも歴史を語り継いでいく必要がある」

<日系人の強制収容> 1942年2月19日、フランクリン・ルーズベルト米大統領は前年12月7日の日本軍による真珠湾攻撃と日米開戦を受け、大統領令9066号を発令。諜報(ちょうほう)活動や軍事施設などに対する妨害活動を防ぐという名目で米軍は米西海岸とアリゾナ州の一部を軍管理地域に指定し4万5000人の日系1世と7万5000人の2世、3世の計12万人が10カ所の荒れ地につくられた強制収容所に隔離された。ワイオミング州のハートマウンテンもその一つで計約1万4000人が収容された。

 

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