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【国際】

米中枢同時テロ18年 「必要なのは分断ではなく団結」

11日、米ニューヨークで開かれた追悼式典で米国旗を運ぶ当局者=ロイター・共同

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 【ニューヨーク=赤川肇】日本人24人を含む約3000人が犠牲となった米中枢同時テロから18年を迎えた11日、ニューヨークなど米各地で追悼行事が行われた。一方で、これまでに1万4000人以上がテロ関連のがん患者と認定されるなど、今も多くの生存者が健康問題を抱えている。

 トランプ大統領は声明で「逆境で鍛えられた私たちの団結は壊れず、愛国者らの計り知れない犠牲は忘れられないことを思い出そう」と呼び掛けた。旅客機の激突で崩壊したニューヨークの世界貿易センタービル跡地では遺族らが集まり、恒例の式典を開催。犠牲者一人一人の名前を読み上げた。

 現場で救助活動などに当たった消防士や周辺住民らを対象にした連邦政府の補償事業では六月末時点で、健康調査した約九万七千人中14%の一万四千三十人ががんと診断され、このうち七百三十二人は既に死亡した。がんの種別では、皮膚がん、前立腺がん、甲状腺がん、乳がんが目立つ。

◆イスラム教の若者訴え

「国民が差別主義を隠さなくてもいいと考えるようになっている」と語るカーン氏

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 イスラム過激派の国際テロ組織アルカイダが実行した米中枢同時テロ。米国では一時激増したイスラム教徒らへの憎悪犯罪(ヘイトクライム)が、排外主義的な言動をいとわないトランプ大統領の下、今また多発している。一方、憎悪にあらがいながら国のために立ち上がった若者もいる。 (米ニュージャージー州パターソンで、赤川肇、写真も)

 ニューヨーク近郊の東部ニュージャージー州パターソンはイスラム教徒らの集住地域。シカンダー・カーン氏(27)の弟(18)は三月、同年代の集団に「イスラム教徒もアラブ人も出て行け」と襲われ、頭を十八針縫う重傷を負った。カーン氏自身も昨夏、喫茶店で「爆弾を置いて帰るなよ」と嫌がらせを受けた。

 「見た目と信仰で攻撃された」(カーン氏)という兄弟はニューヨーク生まれのイスラム教徒。両親はパキスタン、アフガニスタン両国境地帯出身の移民だ。

 十八年前、小学生だったカーン氏は世界貿易センタービルが崩れ落ちる様子をテレビで見た。「ショックで、何が起きたか分からなかった」。あの日を境に、人生も地域も変わった。

 近所のモスク(イスラム教礼拝所)は警察が入り浸り、テレビでは白人至上主義者らが「イスラム教徒を地獄へ」と息巻いていた。父親から「正しい行いをすれば、誰もおまえを傷つけない」と諭された。が、罪なき人を殺すテロに反発を抱き、イスラム教が誤解されるのも座視できなかった。

 大学在学中に民間軍事会社の一員として、アフガニスタンで米軍特殊部隊を支えた。現地語要員や情報アナリストとして数カ月働き、若者らがラジオなどを通じて反政府武装勢力に洗脳される現実を知った。

 現在、団体職員として若者の就労支援をしながら、自身が創設したNPOで国内外の難民や移民の保護、教育に取り組む。若者らをテロ組織から遠ざけるのが主な目的の一つだ。

 トランプ氏は「イスラム教徒は私たちを憎んでいる」と決め付け、非白人の野党議員に「国に帰ったらどうか」と迫る。イスラム教徒にとり困難な状況が続くなかで、カーン氏は「必要なのは分断ではなく、団結して前に進むこと。それがこの国のためになる」ときっぱり語った。

 

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