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【国際】

トルコ侵攻黙認 利害優先の大国、クルド孤立

 【カイロ=奥田哲平】トルコ軍がシリア北東部への越境攻撃に踏み切ったことで、少数民族クルド人が孤立している。トランプ米政権が侵攻に「青信号」を出し、シリア内戦を主導するロシアも事実上黙認。過激派組織「イスラム国」(IS)という「共通の敵」が消滅したことで、各国の利害優先が顕在化した形だ。

■黙認

 隣国との国境紛争を終結させたエチオピアのアビー首相にノーベル平和賞授与が決まった十一日、シリア・トルコ国境沿いは砲弾が飛び交った。「ISとの戦いに犠牲を払ったクルドは、世界平和に寄与したのではないのか」。クルド系民兵組織幹部のシェルバン・ダルウィシュ氏が憤る。

 IS掃討作戦の最前線で、兵士一万人以上を犠牲にしてきたクルド人勢力。米国の武器供与を受けたものの、北大西洋条約機構(NATO)二番目の軍事力を誇るトルコ軍相手に分が悪いのは明らかだ。「世界はトルコの攻撃を黙って見ているだけだ」(同氏)

 トルコにとっては、国内に抱える非合法組織クルド労働者党(PKK)と一体とみなすシリアのクルド人勢力が、シリア北東部で支配地域を確立するのは「安全保障上の脅威」。国境沿いに緩衝地帯を築く一連の作戦で障害となってきた米国が撤収したのを機に、侵攻に踏み切った。

 その軍事作戦を「悪い考えだ」と言いながら、「クルド人は第二次大戦で米国を助けたわけではない」と突き放したトランプ米大統領。優先したのは来年に控えた大統領選だ。シリア駐留米軍の撤退はかねての選挙公約。NATO加盟国トルコにも配慮し、撤収ありきの場当たり的な対応に終始している。

■無念

 十日に開かれた国連安全保障理事会は、欧州諸国が「一方的な軍事行動の停止」を求めたものの、一致した声明は出せなかった。米国の影響力低下を望むロシアのネベンジャ国連大使は「シリアでの違法な軍の駐留も言及すべきだ」として米国に矛先を向けた。

 ロシアはIS復活に懸念を示すものの、トルコとはイランとともにシリア和平協議で協力関係にある。エルドアン大統領が侵攻直前、電話で理解を求めたのはロシアのプーチン大統領だった。ロシアを後ろ盾とするアサド政権も「外国軍(米軍)の人質になった裏切り者との対話は受け入れない」(外務省高官)とクルド側と距離を置いた。

 トルコ軍の砲撃にさらされる国境沿いの町カミシュリで青少年支援施設に勤めるレナス・シャムス氏(35)は悔しさをにじませた。「クルドはいつも国際社会に裏切られる。土地と民を守るのに頼れるのは自分たちだけだ」。イラクやイランなどにまたがり、歴史的に「国を持たない最大の民族」と言われるクルド。IS掃討作戦を通じて自治地域を広げてきた戦略は、後退せざるを得なくなっている。

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