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【国際】

少子高齢化の独 介護職不足 外国人職員、口コミで確保

ベルリンの老人ホーム「カリタス高齢者センター」で暮らすヘトウィヒ・ポーラントさん(中)と談笑する職員のイダルベルト・ラモスさん(右)とマリア・フレンチェさん

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 日本と同様に少子高齢化が進み、労働力不足に直面しているドイツ。特に高齢者介護の分野は人手不足が深刻化し、外国人労働者への依存度が増している。施設間の人材獲得競争が激しくなる中、移民系の職員が七割を超える老人ホームを訪ね、人材確保の秘訣(ひけつ)を聞いた。 (ベルリン・近藤晶、写真も)

 「ここは過ごしやすくて、とても満足してる」。百一歳のヘトウィヒ・ポーラントさんは、ベルリン・シャルロッテンブルク地区の老人ホーム「カリタス高齢者センター」で暮らし始めて十一年になる。入所者に自宅にいるような気分で過ごしてもらうため、職員に制服はない。動きやすく、衛生上六〇度以上で洗濯できる服装ならば自由という。

 ホームでは、「高齢者介護士」と「ヘルパー」計二十七人が働き、七割を超える二十人が移民の背景を持つ。出身国はキューバやブラジルといった中南米のほか、ロシアやポーランド、ウズベキスタン、トルコなど十カ国以上と多様だ。

 高齢者とのコミュニケーションにドイツ語の習得は欠かせないが、ジークリット・マリノフスキ施設長は「互いに学び合うことで文化の違いはプラスになる」と指摘。「中南米出身者は明るく、高齢者への接し方がとてもいい。介護の知識は勉強すれば身に付くが、共感する姿勢は学ぶことができない」と語る。

 キューバ出身で高齢者介護士のイダルベルト・ラモスさん(39)は母国で現在のパートナーと出会い、十一年前に渡独。ドイツ語を学んだ後、職業訓練で介護を体験し、訓練先の施設で働きながら資格を取った。

 「キューバでは、お年寄りの世話は家族でするのが当たり前。最初はドイツ語に苦労したけど、同僚が助けてくれる。稼いだお金は家族に送っている。ずっとここで働くつもりだよ」

 ドイツの高齢化率は21・7%。日本(28・1%)に比べ低いものの欧州諸国の中では高い。独連邦統計庁によると、二〇一七年時点の要介護者は約三百四十万人。三五年までに四百万人に達するとの推計もある。高齢者介護の現場では昨年、約二万四千人の人手不足が指摘され、人材獲得が急務となっている。

 「ここでは人手不足の問題はないが、他の施設では大変だという話を聞く」と施設長。介護現場は重労働の割に賃金が高くない。離職者が絶えず、職場環境が悪化し、さらに離職者が増えるという悪循環に陥っている施設もあるという。

 ドイツは、不足する介護人材を東欧諸国など欧州連合(EU)域内で補ってきたが、一三年からは「トリプル・ウィン」と呼ばれる二国間協定を結び、フィリピンやセルビアなどEU域外にも拡大。今年七月にはコソボと協定を結んだ。ベルリンの大規模介護事業者は一三年から連携して外国人材を受け入れている。

 だが、カリタス高齢者センターの職員は、二国間協定がない中南米出身者が多い。ニカラグア出身のヘルパー、マリア・フレンチェさん(56)は「ここで働く友人に勧められた。職場の雰囲気もいいし、仕事はすごく楽しい」。キューバから来たラモスさんも母国の妹を呼んで一緒に働きたいと考えている。

 施設長は、仲介業者を通じて多くの外国人労働者を集めるような方法には否定的だ。「中南米出身の職員が多いのは口コミで広がったから。外国人労働者といい関係を築き、働いてみたいという職場環境であれば彼らが新たに人を呼んでくれる。大切なことは呼び寄せるより選ばれることだ」

<ドイツの介護資格> 「高齢者介護士」は身の回りの世話に加え、投薬など一定の医療行為が可能。養成課程は3年。施設に一定数の配置が義務付けられる。「ヘルパー」は食事や入浴、排せつなどの介助のみ。独連邦保健省によると、介護分野の就業者は約58万人、うち1割以上が外国人。連邦雇用庁によると、高齢者介護士の平均給与は月額2746ユーロ(約32万円)で全産業の平均2965ユーロを下回り、待遇改善が課題となっている。

パソコンで職員の勤務状況をチェックするジークリット・マリノフスキ施設長

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