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【国際】

<引き裂かれた香港>(中)若者を問題視 批判精神、再教育の動き

18日、香港大のキャンパスで行われた抗議集会で、携帯電話のライトをともす中高生ら=中沢穣撮影

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 先週末、香港大のキャンパスで開かれた中高生らの集会で、九校の約五百人が「革命の時だ」と声を張り上げた。こうした小規模な集会が週末ごとに香港のあちこちで開かれている。

 「香港の自由が失われるのは本当に怖い」。高校三年の女性(18)は、将来への強い不安を口にする。会場には中学生の姿も多い。

 彼らの間には、中国共産党の一党独裁に飲み込まれることへの恐怖がある。特に六月以降、市民の声を力でねじ伏せようとする香港政府に対し、中国政府が支持すると明確にしたことでその思いは一層強まった。

 何度もデモに参加してきたという女性は「私たちはここで何十年も生きていく。いま声を上げないと手遅れになる。自由が失われてからでは抗議もできない」と焦燥感を示す。多くの学校で、週一回の授業ボイコットや学校を取り囲む「人間の鎖」などが続く。

 しかし中国政府には、こうした若者の姿は一九九七年の香港返還以降の教育が失敗した結果と映る。やり玉に挙げるのは、二〇〇九年に高校の必修となった「通識教育」だ。日本の「公民」に近いが、詰め込み式教育からの脱却を掲げ、貧富の格差や人権、環境などについて考えさせる内容という。

 共産党機関紙、人民日報(電子版)は、中国ではタブーの天安門事件なども扱う通識教育が「中国を醜く描き、対立をつくる内容を含む」と批判。愛国心を育む「国民教育」の不在も問題視する。

 中国青年報(同)も「批判精神には限度がある。(共産党の統治など)基本的な国策は疑問を許さない」と訴え、「香港の教育は大陸と『ドッキング』していない」として大陸のような厳格な統制が必要との考えを示す。香港では親中派の立法会(議会)議員らが、通識教育の見直しを模索する動きも出ている。

 国民教育は香港政府が一二年に導入しようとしたが、共産党賛美の内容が中高生の反発を招き、撤回に追い込まれた。抗議運動を主導した中高生団体「学民思潮」のスポークスマンだった張秀賢(ちょうしゅうけん)氏(25)は、抗議活動について「中国政府は香港の主権が戻っても人の心が戻らないと焦り、香港に圧力をかけすぎたことが背景にある」と話す。

 張氏は「十年ぐらい前は香港市民の『中国人意識』は今より強かった。(〇八年の)北京五輪で中国人選手に声援を送った記憶のある若者は多い」と振り返る。しかし、国民教育の導入失敗に加え、反中国的な本を扱う書店経営者の失踪などもあり、香港市民の心は大陸から離れていった。香港大の六月の調査では十八〜二十九歳の2・7%が「自分は中国人」と答えた一方、「香港人」は75%で返還以来最も高かった。

 デモに参加した若者らは、通識教育の影響は小さいと異口同音に話す。張氏も「感情は教育よりも日々の経験や生活で養われる」と反中国感情の高まりは教育のせいではないと考える。その上で「反中国感情が強い現状では、愛国心を植え付ける教育を導入しても逆効果だ」と話した。

 

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