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【国際】

香港の次代、もう一つの戦い 11・24区議選 新人立候補相次ぐ

 香港で、区議会議員の選挙(十一月二十四日)戦が始まった。今回は抗議デモによって、市民の政治意識が高まり、多くの新人が立候補し、投票に必要な有権者登録も大幅に増えた。現職の壁が大きく立ちはだかるのは日本の選挙と同じだが、新人候補はデモとは違う形で、香港を変えようと奮闘している。 (香港で、中沢穣、写真も)

19日、香港・九竜地区の選挙区から立候補した梁凱晴さん

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 「ゴキブリ」「暴徒」。香港・九竜東部の観塘(かんとう)区の選挙区から立候補した会計事務所職員の梁凱晴(りょうがいせい)さん(25)は、選挙区でチラシを配っていたときに高齢者の罵声を浴びたことがある。選挙区内には、デモを苦々しく感じる高齢者の住民も少なくない。「そういう高齢者にこそ、デモの目的は破壊ではないと訴えたい」

 梁さんが憂慮するのは、六月に抗議活動が始まって以来、香港で進む社会やコミュニティーの分断だ。「経済成長期に働き、努力が成功につながった高齢者の世代と、どんなにがんばっても家が買えない若者の世代には分断がある」。視聴が無料のテレビが全て親中派であることも影響、「高齢者は親政府、親中国の割合が高い」という。

 区議は予算案審議などの実質的な権限はなく、地域の課題を政府に伝える役割を担う。梁さんは「政府に一定の影響力はある。若者と高齢者、警察と市民、そういう分断を癒やすには小さい地域から出発するのがいい」と考える。

 もともと立候補は考えていなかったが、六月の大規模デモが転機となった。会計士試験の準備をしていたが、「ニュースをみて勉強が手に付かなくなった。香港の自由や正義が奪われていると感じた」。その後、許可のあるデモにはほとんど参加しているという。

 区議選では当初、ボランティアで民主派候補を手伝うつもりだった。しかし親中派候補の無投票当選が見込まれる選挙区の存在を知り、「変化を望む人も多い。選択肢があると伝えたい」と立候補を決めた。

 梁さんのような新人の立候補が相次いだため、前回は六十八あった無投票の選挙区は今回はない。立候補者も前回から百人以上増え、過去最高の千百四人に達した。有権者登録は香港全体で約四十万人増えて四百十三万人にのぼった。

 実は梁さんの選挙戦は厳しい。そもそも区議選は党派色が薄く、地域の有力者が選ばれる傾向がある。改選前の議員は親中派が約七割とみられる。四百五十二の選挙区でそれぞれ一人が当選する小選挙区制のため、資金や知名度に乏しい新人の当選は容易ではない。

 さらに梁さんの相手候補は前回の選挙で七割以上の得票率だった。だが梁さんは「負けたら終わりではない。選挙をきっかけに活動を広げたい」と話す。

香港・九竜半島の選挙区で立候補した張文龍さん(左)と王振霖さん。同じデザインのTシャツでガッツポーズ

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 ネットを通じて同じ志の仲間を見つけ、立候補を決めた若者もいる。元広告デザイナーの張文龍(ちょうぶんりゅう)さん(31)と、航空会社の客室乗務員、王振霖(おうしんりん)さん(39)は、ほかの新人三人とともに九竜半島の新界・葵青(きせい)区でそれぞれ立候補した。そろいのTシャツはボランティアがデザインしたという。

 張さんは、民主化を求めた五年前の雨傘運動のころから、「社会のために何かしたい」と考えていたという。「香港の人にとって政治は遠い存在だった。でも香港のためにがんばっている人がいることを知ってほしい」

 張さんと王さんもベテラン現職議員を相手に厳しい戦いだが、手応えも感じている。

 張さんは「六十歳すぎの高齢者に『今回は初めて選挙に行く』と言われた。うれしかった」と話す。王さんも「このまま黙って『ノー』と言わなければ、事態はどんどん悪くなる。有権者は一票を大事にしてほしい」。勤務を終えた早朝に街頭に立つこともあるが、投開票の十一月二十四日まで「全力を尽くす」とガッツポーズを見せた。

 

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