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【国際】

中国で子どもの「いじめ」深刻 暴行動画がネットで拡散 政府も問題視

福建省寧徳市で撮影されたとされる暴行動画。女子生徒は複数の生徒に囲まれて、蹴られたり、靴で殴られたりした=微博より

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 中国で子どもたちの「いじめ問題」が深刻化している。特にここ数年、被害生徒を集団で暴行する現場を撮影した動画が頻繁にインターネット上に投稿され、波紋を広げている。問題を重く見た中国政府は十月、いじめ防止の新制度を整備する法改正に乗りだした。(北京・坪井千隼、写真も)

◆「裸の動画ばらまくぞ」 主犯格は「留守児童」

 「ひざまずけよ。言うことを聞かないと、裸にして動画をばらまくぞ」。数人の生徒が笑いながら、女子生徒の顔を何度も殴る。今年七月、中国南東部・江西省萍郷市で、中学二年生の生徒を同級生の女子生徒らが集団で暴行する動画が撮影され、中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」でネット上に公開された。

 「鬼のようだ」「こんなやつらは牢屋(ろうや)にぶちこめ」。動画を見た人たちからは、憤りの書き込みが相次いだ。視聴者によって学校名が割り出され、地元当局に通報された。

江西省萍郷市で撮影されたとされるいじめ動画から。動画には、ひざまづいた女子生徒を、笑いながら殴る生徒たちが映っていた=微博より

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 萍郷市政府教育局によると、学校側の調査で、加害者グループは他にも複数の女子生徒に暴行を加えていたことが判明した。主犯格の女子生徒(13)は以前から不登校がちで、問題発覚後は、全く学校に来なくなった。両親が遠方に出稼ぎに出ている「留守児童」で、保護者の祖父母ともほとんど連絡がつかない状況だという。

 教育局担当者は本紙の取材に「私たちも深刻に受け止めているが、学校でできることには限界がある」と述べ、「主犯の生徒は刑事罰の対象となる十四歳に達していない。これ以上は政府や学校ではなく、家庭教育の責任だ」とさじを投げた。

◆加害者も被害者も女子 スマホが後押し

 中国では毎月のようにいじめや暴行の動画が投稿され、問題になっている。六月に投稿された南部・福建省寧徳市で撮影された動画は、さらに悪質だ。十四歳の女子学生が、集団で殴られたり蹴られたりされ、服を脱がされる様子が映っている。

「いじめ問題は子どもだけの問題ではない。経済成長を優先し過ぎた社会全体の問題だ」と述べる皮芸軍・中国政法大教授=北京市で

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 青少年犯罪に詳しい中国政法大の皮芸軍教授は、「中国では、いじめの本格的な調査は行われておらず、実態が分かっていない」としつつ、動画問題について、「中高生の大半がスマホを持ち、SNSが普及したことが背景にある。新たな形態の暴力だ」と話す。

 いじめ動画は、加害者も被害者も女子が大半。「傷害事件は男子の方が多いが、動画を撮影し相手を辱める手法は、女子が圧倒的に多い」(皮教授)。トラブルの原因としては、男女関係や友人関係のもつれが挙げられるという。

◆出稼ぎで両親不在も一因 子どもに負担

 萍郷市のケースのように地方の小規模都市や農村部が目立つのも特徴だ。皮教授は要因として、両親が出稼ぎに行き残された「留守児童」の問題を挙げる。中国国内には七百万人の留守児童がいるとされ、「子どもの精神的負担が大きく、家庭教育もおろそかになりがちだ」と分析する。

 世論の関心の高まりを受けて、中国政府も動きだした。いじめ対策を盛り込んだ未成年保護法の改正案が十月下旬、中国の国会に相当する全国人民代表大会の常務委員会に提出された。近く可決される見通しだ。

 法案では、いじめ事案が確認された場合、学校や関係機関が被害生徒を保護し、加害学生に対し指導や矯正を行うことを義務付ける。程度が重い場合には、加害者の処罰も行う。

◆経済格差広がり 心の豊かさが軽視され

 保護者に対しても、家庭での教育を強化させる。教員を対象とした研修や、いじめをテーマにした授業の実施も盛り込まれている。

 皮教授は「家庭まかせにせずに、国や地方政府が責任を持って子どもを守る、と明確化した意味は大きい」と評価する。その上で、いじめ問題の根本的な原因について、「子どもだけの問題ではない。社会全体が経済成長を追い求めるあまり、人々の格差が広がり、道徳や心の豊かさが軽視されるようになったからでは」と述べ、「社会全体が、もう一度、大切なことは何なのか、考えるべきだと思う」と話した。

 

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