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【国際】

経済まひ…市民生活犠牲 レバノン 反政府デモ2カ月

レバノンの首都ベイルートで15日夜にあった反政府デモ。国会に通じる道路を封鎖する治安部隊とデモ隊が衝突し、催涙弾が撃ち込まれた

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 無料通話アプリ使用への課税方針に対する反発をきっかけに、レバノン各地で政府退陣と早期選挙を求める反政府デモが始まってから十七日で二カ月がたった。ハリリ首相は十月末に辞任したものの新政権が発足されないという政治空白と、長期化する抗議活動が経済活動をまひさせ、市民生活に深刻な影響を及ぼしている。 (レバノン北東部アルサルで奥田哲平、写真も)

 シリア国境に近い町アルサル。地域の主要産業である石材加工業の職人、ナジ・フレイティさん(40)は今月一日、自宅裏で命を絶った。毎月八百ドル(八万七千円)ほどあった住宅建設の仕事はデモ発生後に激減。親類に金を借りるなど生活は行き詰まっていた。

 生活のやりくりを巡る夫婦げんかがあった翌朝、長女(7つ)が学校に持参するパン代千ポンド(七十二円)を頼むと、空っぽの財布を「お母さんに渡して」と伝え、姿を消した。当初は首都ベイルートで広がるデモを「私の分身だ」と好意的だったが、次第に「いつまで続くのか」とふさぎ込んでいた。

 妻タハーニさん(39)は「彼は仕事が好きだった。ずっと自宅にいる気持ちに気づけなかった」と悔やむ。フレイティさんの遺影には「貧しさの犠牲者」と書かれていた。

17日、ナジ・フレイティさんが亡くなった経緯を語る妻タハーニさんと長女

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 レバノンは二〇一一年からシリア内戦の影響で経済低迷が続いており、反政府デモをきっかけに政治家の汚職体質や高い失業率などへの不満が一気に噴出した。企業は従業員の解雇や減給を余儀なくされ、銀行は預金引き出しや海外送金の規制に踏み切った。

 その影響は低賃金労働で暮らす約百万人のシリア難民にも重くのしかかる。支援団体によると、アルサルでは十月以降、三十家族ほどが生活苦で都市部から難民キャンプに移住した。シリアへの帰還を決める難民も増えている。

 七年前にシリア中部から逃れたサウサン・ジャルバンさん(44)は、アルサルで営む洋裁店が休業状態。夫(48)も日雇いの仕事を得られず、夫婦で月千ドルの収入が先月はゼロに。帰国希望を申請し、許可を待っている。反政府デモが拡大するレバノンの状況を母国に重ね、「シリアの例を見るべきだ。混乱から内戦に発展すれば何の利益もない」と心配する。

洋裁店の収入がなく、シリア帰国を決めたサウサン・ジャルバンさん

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 シリアの内戦はアサド政権の優位が確定的。一部地域を除いて戦闘はほぼ収束したものの、荒廃状態や治安への懸念から帰国をためらう難民が多かった。ジャルバンさんもシリアの自宅が何者かに燃やされたままだが、「政府には複雑な思いがある。でも、家族を養う唯一の選択肢はシリアに戻るしかない。頑張って働けば、家を再建できる」と、自分を納得させるように話した。

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