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【国際】

米報道博物館、年内で幕 言論の自由 訴え続け 世界の新聞1面、毎日展示

年内で閉館するニュージアム。建物の壁には合衆国憲法修正第1条の条文が掲げられている

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 米国の首都ワシントン中心部で、言論の自由の重要性を訴え続けてきた報道博物館「ニュージアム(NEWSEUM)」が資金難を理由に年内で閉館する。世界中で報道の自由が脅かされる中、閉館を惜しむ人たちが連日、足を運んでいる。 (ワシントン・岩田仲弘、写真も)

 「博物館が閉館すると聞いてやって来た。本当に残念。今こそ報道・言論の自由が必要なのに」。ニューヨークから訪れたコニー・バレットさんは嘆いた。

ニュージアムに展示された世界の新聞各紙の1面

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 「ニュージアム」はニュースとミュージアム(博物館)を合わせた造語で、合衆国憲法修正第一条で定められた「信教・言論・出版・集会の自由と請願権」の歴史と役割を知ってもらうために一九九七年にワシントン郊外に開館。二〇〇八年四月、連邦議事堂近くに規模を拡大して移転した。

 世界の新聞八十紙(オンライン上では八百紙以上)の一面を毎日展示。一一年三月の東日本大震災発生直後には、津波で輪転機が止まり、油性ペンで一枚ずつ、手書きで発行された夕刊紙「石巻日日(ひび)新聞」の号外六日分(三月十二〜十七日)を譲り受け、その一部を一四年まで展示した。

 当時、記者として現場を駆け回った同新聞社常務取締役の平井美智子さんによると、博物館から「世界のみなさんにぜひ知ってもらいたい」と連絡があった。

世界貿易センターのアンテナ残骸。後方は米中枢同時テロ発生翌日付の世界の各紙=いずれもワシントンで

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 平井さんは「ネットに情報があふれる中、当時は手書きで発行して大丈夫か心配したが、長年地域に根差した新聞の信頼の厚さを実感した。ジャーナリズムの原点である『情報の信頼性』を高く評価してもらい、感謝している。また世界に発信する機会があれば役立ててほしい」と述べた。

 博物館の記念碑には、内戦状態のシリアで一二年に銃撃され亡くなった山本美香さん、一五年に過激派組織「イスラム国」(IS)に殺害されたとみられる後藤健二さんら日本人を含め、取材中に死亡した記者やカメラマンら二千三百人以上の名が刻まれている。

 ドイツ国外で原形のまま保存される遺物としては最大規模の「ベルリンの壁」や、テロで崩壊した世界貿易センタービルのアンテナの残骸とともに、冷戦崩壊や米中枢同時テロを報じた歴史が語られている。

◆オンラインでは継続

 博物館の建物は、ジョンズ・ホプキンズ大に売却され、同大高等国際研究大学院(SAIS)のキャンパスになる予定。博物館の貴重な資料は、ワシントン郊外で保管される。博物館のソーニャ・ガバンカー広報部長は「憲法の理念を伝える使命はまだ続く。建物を売却するのはそのためで、今後も資料を用いたワークショップなどを続けていきたい」と強調。オンライン上での新聞の一面掲示は、閉館後も続けていく。

 

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