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【国際】

「ビロード革命」から30年 「デモは対話の始まり」

11月16日にプラハ市内の公園で行われた反政権デモには主催者発表で30万人が参加した

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 1989年にチェコスロバキア(当時)で社会主義体制が崩壊した「ビロード革命」から30年となったチェコで、汚職疑惑に揺れるバビシュ首相の退陣を求めるデモが勢いを増している。先月のデモは革命以来最大とみられる規模に拡大。当時、革命の発端となった学生デモの参加者は「デモは対話の始まりだ」とその意義を訴える。 (プラハで、近藤晶、写真も)

ナーロドニー通りにあるビロード革命の学生デモ記念碑

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 「誰に会って、何を話していいのか常に気をつけていなければならない時代。デモに参加すれば退学させられるかもしれなかった。それぞれの勇気にかかっていた」。プラハにある「共産主義博物館」の外部学芸員を務めるアレクサンドル・コラープさん(55)は三十年前を振り返る。

 八九年十一月十七日のデモは、ナチス・ドイツ支配下にあった三九年の反占領デモで死亡した学生の追悼集会という形で行われた。だが、学生らが民主化を求めるスローガンを叫び始めると状況は一変した。

 警官隊は市中心部のナーロドニー通りを封鎖。解散命令に従わなかったとしてデモ参加者をこん棒で殴打し拘束した。「犠牲者が出なかったのは幸運でしかなかった」とコラープさん。弾圧に反発し、デモは全土に拡大。約一カ月後に共産党政権は崩壊した。

 革命から三十年を迎えた先月、反政権デモに主催者発表で三十万人が参加した。バビシュ氏には欧州連合(EU)の補助金を不正に受け取った疑惑が浮上している。バビシュ氏は疑惑を全面否定しているが、四月から各地でデモが相次いでいる。

 政権が退陣に追い込まれるかは不透明だが、コラープさんは「革命で得られた自由は非常に価値がある。人々が政治に関心がなく、デモが起きないような状況は、デモが起きる状況より悪い」と指摘。「デモで政治家に不満を伝えることによって、政治家は危機感を覚える。デモは世の中を変える最初の一歩となる」と強調した。

◆「法の支配」軽視されてきた プラハ経済大・ドボジャーコバー教授に聞く

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 ビロード革命の評価とチェコの政治情勢について、プラハ経済大のウラジミーラ・ドボジャーコバー教授(写真、政治学)に聞いた。

 −革命から30年が過ぎた。

 デモの後、一定の対話のもとに権力が移行し、無血で実現できた。革命によって言論・表現の自由などは獲得できたが、「法の支配」が軽視されてきた。

 −バビシュ政権誕生の背景は。

 汚職などのスキャンダルが続き、有権者は新しい政治家を求めていた。前回下院選でANOの得票率は約30%。支持層の年齢や教育水準は幅広く、汚職問題に対する反動と言える。西欧諸国に比べ、チェコの給与水準は非常に低かった。バビシュ氏が財務相時代に公務員給与の引き上げに成功したことも大きい。

 −バビシュ氏にも汚職疑惑が浮上している。

 バビシュ氏はポピュリズム(大衆迎合主義)の傾向があり、国家を企業のように考えている。現政権は疑惑を政権のコントロール下に置こうとしており、権力をチェックする法制度が不十分な点を懸念している。反政権デモが「法の支配」を訴えていることは非常に重要だ。

<バビシュ政権> 実業家出身で「チェコのトランプ」とも呼ばれるバビシュ氏は2011年に新興政党「ANO2011」を設立。13年の下院選で連立政権入りし、第1副首相兼財務相を務めた。17年の下院選でANOが第1党に躍進し、バビシュ政権が発足した。好調な経済を背景に、支持率は疑惑発覚後も40%以上を維持している。

 

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