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【国際】

<民衆の叫び 世界を覆うデモ>(2)米国 平等 社会主義に夢

社会主義団体の地元リーダーとしてデモの先頭で気勢を上げるマイケル・エシールカさん(手前)

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 米南部ルイジアナ州の最大都市ニューオーリンズ。昨年十二月の夕暮れ時、市役所の広場に建設作業員ら二十代、三十代を中心に百数十人が集まった。近くで建設中の高層ホテルが崩壊し、作業員三人が死亡した事故を「資本主義の犯罪」と糾弾、市当局や市議会に対策を訴えるデモだ。

 「私たち一人一人のために団結しよう」。若い女性がメガホン代わりに両手を口に当て、先頭で声を上げた。主催した社会主義団体「米国の民主的社会主義者」(DSA)の地元支部代表マイケル・エシールカさん(26)だ。同様のデモは全米各地で相次いでいる。

建設中のホテルが一部崩壊し、作業員3人が死亡した現場=いずれも昨年12月

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 トランプ大統領は、政情不安が深刻な南米のベネズエラなどを引き合いに「米国は決して社会主義国にはならない」と警戒感をあおる。ただ、旧ソ連と対峙(たいじ)した冷戦を終えた後に生まれた世代を中心に「社会主義」への抵抗は薄れている。

 米ハミルトン大のモーリス・アイサーマン教授(米国史)は「旧ソ連や冷戦を知らない世代に社会主義は悪霊ではない」と話す。むしろ米国資本主義のひずみを是正する「平等」「公正」の代名詞のようにすら語られる。

 米調査会社ギャラップの世論調査(二〇一八年)によると、十八〜二十九歳で社会主義を肯定的に見る割合は51%に上り、資本主義の45%を上回る。六十五歳以上では60%が資本主義、28%が社会主義というのとは対照的だ。DSAの会員数も五万六千人と、トランプ氏が大統領に就任した三年前の四・五倍に増えた。

 米調査機関ピュー・リサーチ・センターの調べでは、世帯主(二十五〜三十七歳)の学歴で世帯収入を比べると、大卒以上と高卒の格差は一八年に二・一三倍に上り、半世紀前の一・四四倍から拡大。一方で大学の授業料は高騰し、米連邦準備制度理事会によると学費ローンの債務は一九年に一兆五千億ドル(百六十兆円)と十年前の二倍超に。進学せねば高収入を見込めず、進学すれば借金苦にあえぐという八方ふさがりの構図が色濃くなっている。

 エシールカさんもその一人。幼いころに両親が離婚、母子家庭で育ち「ずっと貧しかった」。低所得者向けの食料費補助を受け、高校卒業後は大学進学をあきらめ、親元を離れてワインバーやレストランの店員として働いた。二十キロ以上の食器や食べ物を抱えて階段を上り下りし、休憩時間もなく、客の食べ残しで空腹をしのぐ。それでも収入の半分は家賃に消えた。

 国民皆保険の実現や労働者の権利を主張するDSAを知ったのは、そんな時だ。「利益の追求が労働者の幸せより優先され、底辺の人が搾取される腐った経済の仕組み」に気づいたという。「飲食店員から抜け出すため」大卒の肩書を得ようと、今は働きながら公立大学に通うエシールカさんは「社会主義を知り、道筋が見えた。今は力強い気持ちです」と語る。

 若い世代に経済的な格差や苦境が広がるなか、アイサーマン教授は「資本主義に疑問を持てば、その代わりを探すのは当然」と語った。

 (ニューオーリンズで、赤川肇、写真も)

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