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【国際】

「微笑みの国」にひそむ危険 バンコクの日本人駐在員襲撃事件を振り返る

バンコクで1月7日、夫が被害に遭った強盗傷害事件について話す内田あずささん

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 「微笑みの国」といわれるタイ。七万人以上の日本人が在留し、人気の旅行先でもあるが、外国人を狙った犯罪に遭う危険も潜む。首都バンコクで昨年十二月、日本人駐在員がナイフで刺されて大けがを負い、現金を奪われる強盗傷害事件が起きた。被害者の妻で写真家の内田あずささん(39)は本紙の取材に、事件の影響と身を守る大切さを語った。 (バンコクで、北川成史、写真も)

 日本人が多く住むスクンビット地区。先月二十一日午前一時半ごろ、高架鉄道エカマイ駅から約一キロ北のソイ(脇道)で、内田さんの会社員の夫(37)はバイクに乗った男二人に襲われた。

 付近の防犯カメラには男らが内田さんの夫の背中などをナイフで刺し、現金二万バーツ(約七万円)やクレジットカードが入った財布を奪った上、頭を切りつけて逃げる光景が写っていた。

 午前四時ごろ、内田さんは電話の着信音で目が覚めた。折り返すと、英語もよく通じない地元病院に救急搬送された夫のか細い声が聞こえた。「助けて…」

 夫は自宅からさほど遠くない場所で顧客と会食後、健康を考え、歩いて一人で帰ったのが災いした。

 「自分たちの身に起きるなんて」。バンコクでの駐在生活は二度目。通算五年近くになる内田さんも、想定していない事態だった。

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 事件翌日、夫は日本語通訳がいる病院に転院した。短期間で一般病棟に移れるという救急搬送直後の見立てより、傷は重かった。胆管の穴や胸水が見つかって数回の手術を強いられ、集中治療室で一カ月過ごした。

 カードの停止などの事後対応にも内田さんは追われた。治療費は最終的に保険がおりるが、地元病院でかかった二十万円以上相当は立て替えが必要になった。

 内田さんには三〜九歳の三人の娘がいる。楽しみにしていたクリスマスや正月は父親不在に。「事件で負った心の傷が未来にどう影響するか心配」と案じる。

 先月二十九日、警察は防犯カメラの映像を手掛かりに、二十三歳と十八歳のタイ人の男二人を逮捕した。

 警察によると、男らは夜道を一人で歩く外国人を狙い、ほかに二件の事件を起こした疑いがある。薬物を使用した状態で内田さんの夫を襲い、奪った現金はオンラインゲームや貴金属の購入などに使ったという。

 内田さんは「『そんなことのために夫は』というむなしさや怒りが湧いてくる」と身勝手さに憤る。

 穏やかなイメージのあるタイだが、貧富の差は大きく、凶悪犯罪発生率は日本より高い。日本人被害の事件も年二百件を超える。今回の事件後、日本大使館は夜間の一人での外出を控えるよう呼び掛けた。

 「情報を発信することで被害を防げるかもしれない」。内田さんはブログで、事件の手口やその後の推移を詳しく書き続けている。

 理不尽な出来事に見舞われた内田さんだが、帰国は考えていない。タイ人の子どもへの優しさや友人の存在。タイが住みやすい場所であるのは変わりない。「不安や恐怖ばかりに焦点を当てたくない。危険の可能性を頭に入れ、身を守る行動を取っていれば、安全に暮らせると信じている」

 

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